LINE BLOG、久々に更新します。

6/29にヨルニトケルの最新作「Garden」が無事リリースされまして、そこから割と忙しくさせていただいております。
各種サブスクにてお聴きいただけますので、ご登録いただいている方は是非とも。

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リリースに伴って地方へお呼ばれして行ったり、あとはファンコミュニティサービスが開始されたり、さらにここからまた動いていく感じになっております。
こんなに動けるのは本当に久しぶり。

そして、Gardenのリリース直後に発表しましたが、1週間後の9/12に、初の弾き語りイベントを開催し、そこで「GARDEN」という名の小説を発売します。

元々、ヨルニトケルの世界観というのはこの小説の為にあったものでした。
僕自身がバンドを始めるずっと前から小説家にぼんやりと憧れていたこともあり、楽曲達にはこの物語の要素を何かしら詰め込んで、世に発表しておりました。

全8章からなるこの作品、今回は冒頭部分「おやすみ、さよなら」を、発売に先駆けて公開しようと思います。
(発売後にまとめて読みたい方は、ここでお戻りくださいね。)

正直、この部分を読んだだけでも、曲の聴こえ方見え方は変わると思います。

それでは、どうぞお楽しみくださいませ。

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GARDEN
布施 達暁

▼SCENE1 「おやすみ、さよなら」

 気が触れた三月のこと。傘を捨てて、夜に溶けた。

 三番線の人だかりを俯瞰で見る。まだ暗い早朝とはいえ、流石は新宿。そこそこの人数が、線路の上に散乱する赤を目撃していた。
黒い傘が良いアクセント、中々に美しく、華々しい最後の瞬間だったのではないだろうか。
「ねえ…話が違うんじゃない?」
 怪訝な顔をしたジェシカが、死神を名乗る男に詰め寄る。
「…違う、とは、それは一体どういう?」
「死ぬ時にあなたと契約すれば、素敵な来世を迎えられるって言っていたじゃない。」
「ええ。おっしゃる通りです。」
「それならさ…なんでワタシたちは、まだここに居るわけ?」
 ジェシカの問いに、思わず目をまん丸くした死神。彼の気持ちもわからなくはない。僕もまた、死ぬのは初めてのことだったけれど、なんとなく、ここにいる理由には察しが付く。
「ええと…まずですね、人は死んですぐに来世を迎えられるわけではないんですよ。お通夜やらお葬式やらあるでしょう?あの辺の行事が終わってから、ようやく、手続の管轄が現世側からこちら側に移るのです。そしてそこから四十九日の間に…」
「あーもう!そういう面倒な説明はいいから!なんで死んだはずなのに、まだ現世に留まっているかの理由が知りたいのよ!」
「なるほど。まあ、単刀直入に申し上げますと…」
「自分の罪を自覚するためでしょう?」
 死神より先に、自然と口が動いてしまった。死人に口なし…あれは嘘だったな、なんて思いながら顔を上げると、キョトンとした顔のジェシカと、口元だけがつり上がった奇妙な笑みを浮かべた死神が、そこにいた。
「物分かりがよろしいのですね、アンリさん。」
「急に上から目線…。」
「実際、あなたよりは、こちら側の世界には詳しいのですが。」
「いや、まあそうだけど…。」
 得意げに話す死神が鼻につく。とはいえ、ついさっき三番線にダイブして、真っ赤な肉片に変わったばかりの僕らとしては、水先案内人たる彼の言うことに従う以外、選択肢はなかった。
「罪を自覚するため?そもそも罪って何よ!散々苦しんで、折角、死んで辛いことから解放されると思ったのに…!」
 ジェシカは心底あり得ないという顔で言い放った。
「わかります。わかりますよ。往々にして自ら死を選ぶ方と言うのは、やはりそのように仰る方が多いです。しかしながら、人間というのは、生きる為に生まれてしまうのですよ…最早そういうプログラムというか。そして、世界という見せかけの大枠に組み込まれて、機能していく。自ら死を選ぶというのは、プログラムの強制終了みたいなものなのですよ。それをやられてしまうと、世界が困ってしまうというか、機能が一時的に止まってしまうのですよ。その分、作業効率が落ちるわけですからね。こんなの、損害でしかないわけです。」
「世界なんて知らないわよ…しかも、作業効率?私たちが世界にとって何の機能を果たしていたっていうわけ?」
「ああ、そうでした。すみません、説明が足りていませんでしたね。世界というのは、元々、終わりに向かって動いているのです。」
 破滅に向かって…と某ロックバンドが生き様を示していたのは、どうやら世界の意思そのものの体現だったみたいだ。形あるものいずれ滅する。僕らの死もまた、一つの世界の終焉と同じことだと言える気もする。
「技術の進歩と共に、環境は破壊されていきました。生活は豊かになり、便利なものが溢れる程、人々の想像力は失われていく。白痴化が甚だしい中、求められるものは余白の無いものばかり。そうやって人々は、次第に自分で考えることを止めてしまう。それでも生活は続いていく。終わりを迎えるまで、さながらリヴィングデッドの様相でね。まあ、そんなことに気付きもせず、大体の方は天寿を全うするのですが。我々を司る神たる存在は、そんな人間の手に依って終わりゆく世界を、見守り続けているわけです。」
 神様というやつは壊れていく様を見ているというのか。ただ、壊しているのは人間自身であって、世界は「そういう風にプログラムされたもの」という…。確かに、その存在はあくまで縋る対象でしかなかった以上、彼の語ることはきっと真実なのだろう。奇跡なんてちっとも起こらなかったし、現に僕たちがこうして死神と対峙している現状こそが、皮肉にも神様と人間の繋がりのあらわれになってしまった。終わりにだけ出てきて、素敵な来世の営業をかけてくるなんて。
「じゃあ何よ…世界を終わらせる前に勝手に自分の人生を終わらせて無責任だ!とか言うわけ?」
「いや、そこまでは言いませんよ。第一、あなたが生涯を終えるまでの間に、世界が終わる予定はありませんでしたし。」
「はあ?だったら…」
「あのさあ」
 終わりの見えない会話というのが僕はどうも嫌いだ。ジェシカは感情に任せて発言してしまうので、相手が相手だといつまでも会話が進んでいかない。思わず遮ってしまったからには、僕のペースに引き込まなくては。
「ねえ、死神さん。自分の罪を自覚するまで、来世は迎えられないって認識でいいの?」
「アンリさん、本当にあなたは…」
「いや、これはさっき言ったことを敢えて質問にしただけだから…話を進めて。」
「…お気付きのように、自分の罪を自覚するまでは、来世を迎えることが出来ません。しかも自ら命を絶ったとなると、来世を迎える前に、気が遠くなる程の長い間、地獄を彷徨い続けなくてはならないのです。」
「地獄とか本当にあるのね…。」
「ええ、ありますとも。そして地獄があれば、天国もあります。まあ、天国というのは、本来は来世までの待合室みたいなところで。丁度良い来世が決まった方から順番に、再び現世へと受肉していく形となるのですよ。」
「…ということは、僕とジェシカは、まずは地獄に堕ちないといけないの?」
 一番大事な部分はここだ。そして、死神と契約したからには、ここで必ず何か仕掛けがあるに決まっている。意外と話を飲み込めている表情のジェシカと何となく目を合わせた後、改めて不気味な笑みを浮かべる死神へと目を向ける。
「そこですよね、地獄、怖いですよね…ご心配なく。私と契約していただいたからには、地獄にも堕ちませんし、素敵な来世もお約束します!…ただし、天国経由ではありません。独自のルートでの来世へのご案内となりますので、少しばかりお時間をいただきます。その間に、罪を自覚していただいて、素敵な来世に活かしてもらえたら幸いです、というのが私共死神のやり方なのですよ。」
「独自のルートって?天国と地獄以外にも何処か行くところがあるっていうの?」
「ええ。」
 死神はいつしか真剣な表情に変わっていた。こちらをしっかりと見ながら、強い口調で言い放った。
「過去へ行きます。罪を自覚するために必要な出来事の現場にね。」
 次の瞬間、眼下に広がっていた新宿の風景が霞むほどの強い光が、僕たちを包んだ。
 眩しくて、目が開けられない。
 そして、過去へ行くなんて…ある意味、地獄と何も変わらないじゃないか。
 眩しさに悶える中、ひとり平気な顔をした死神は話を続けた。
「正確には、過去の追想をするだけです…リプレイを見る様なもの。そこで何があったか。何を思ったのか。そしてどうして、こんな結果になってしまったのか、自覚していただけたら、それでいいのですよ。」
「…流石は死神とでも言うべきなのかしら…ワタシの過去なんて…地獄よりも辛いから死を選んだって言うのに…。」
 ジェシカは、どこか悔しそうな、悲しそうな顔を浮かべていた。それは眩しさのせいだけではなかったと思う。
 彼女のことを僕は誰よりもわかっている。一番近くで見ていたからこそ、僕の死と彼女の死が、同じ瞬間に訪れることを、選んだくらいに。
「いやいや…天国へ行く資格も無いのに、地獄を経験せずに来世を迎えられるというのは、本当に恵まれたことなんですよ?…さあ、そろそろここから移動します。ご自分の亡骸に、お別れの言葉をどうぞ。」
 亡骸、と言われて、ハッとした。
 僕もジェシカも、本来はもう無くなっているはずだった。存在の何もかもが終わっているはずだった。ただ、意識がハッキリと残ってしまっている今が「死後」であることを、死神との会話の中で忘れてしまっていた。
 元々いた現世と呼ばれる場所では、既に赤い肉片に変わっている。あれが僕…だったもの、だ。
 光はますます強くなり、いよいよ自分の視界が白一色に奪われていく。
 せめて、見えなくなる前に、もう更新されることはない自分の人生そのものに、優しい言葉をかけて、幕を閉じよう。

「おやすみ」

「さよなら」

 僕とジェシカは同じタイミングで最期の言葉を呟いた。
 いよいよ視界は奪われ、閉じた目の瞼の裏側に、強い光を感じる。
 頭の中を掻き回される様な感覚が襲い来る中、不意に死神が耳元で何か囁いた。

「どうか、戻ってきてくださいね。」

 言葉の意味はいまいち理解できなかったが、少し寂しそうな彼の声を聞いたその瞬間に、意識は途絶えてしまった。

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ここから、SCENE2へと繋がっていきます。
「THE 導入」といった感じですね。
読み進めていけばわかることなのですが、既にこの段階から仕掛けが施されています。
何度も読みたくなる作品ていいですよね。

9/12、僕の誕生日でもあるこの日が、処女作の誕生日にもなります。
「nocturne/philosophy」というタイトルを冠したイベントにて発売です。
演者は僕がリスペクトする3名の歌うたい/哲学家をお招きしております。
チケットご予約はこちらまで、ご連絡お待ちしておりますね。

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▼イベント詳細

2019.09.12(木)DESEO mini with VILLAGE VANGUARD

MESCALIC presents
"nocturne/philosophy"

-cast-
布施達暁(ヨルニトケル)
三浦隆一(空想委員会)
平井拓郎(juJoe)
陶山良太(Plot Scraps)

OPEN18:30/START19:00
ADV¥2,500/DOOR¥3,000
(+1D¥600)

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▼小説「GARDEN」
著者:布施 達暁
発売元:MESCALIC
仕様:A6サイズ
価格:¥1,000 (tax in)

※デジタルブックとしての流通も予定しております。こちらは詳細決まり次第改めてアナウンスいたします。

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また、9/12には、新しい動きについてのお知らせもあります。
平日ではありますが、僕の誕生日ですし、GARDENも出ますし、是非ともこの日と翌日は休日にして、観にいらしてくださったら嬉しいです。

2019年は多分すぐ終わってしまうなあ、この勢いだと。
駆け抜けていきましょうね。年末までね。年末にぐうたらするのすごく好きなんですよ。(年末年始が繁忙期の皆さまいつも感謝しております)
ぐうたらする為にも今、しっかりやるので、よろしくお願いします。
あ、とはいえライブはあると思いますけどね年末。それやったら年末年始は無になりたい。そのまま餅になりたい。



















fusetatsuaki

最近はInstagramをphotolog的に使っているので、このブログに触れる機会も自ずと減っていました。
友人達のブログはよく巡回しているのですが、みんなそこまで更新していなくて。

気軽さや手軽さ、スピード感。
即座に「シェアできる」文化が広まっているからこそ、比較的長文前提となるブログという媒体は、触れる頻度が落ちるのかな、と。

とはいえ、必要な媒体だとは思います。
1つの記事内に流れを作れる、という部分でとても魅力的。
あ、ニュースブログは毎日読んでますね。
楽しいので。

そういえば年始に「有料のブログを開設する」と言っていたのですが、訳あって公開が遅れています。
「どのサービスを使うのか」という部分で悩んでいるというか。

今年からバンドを取り巻く環境が変わり、やり取りをする会社というのが現れてきているのですが、そこが結構魅力的なサービスを展開していたりして。
想像以上のことが出来そうだな、とか。

でも、最初に構想していた部分は、あくまで「僕個人」だからこそ叶えられる、というのがあって。
とはいえ「バンドとして」みたいなのも非常にアリというか。

とりあえず、今は6月リリースの「Garden」の制作をしているので、ある程度落ち着いたら、これに関連させて6月中にスタートしようと思っています。

僕個人の閉鎖領域とバンドでの密な発信の場と、ふたつ出来てくると思います。
そしてここやそれ以外のSNSは、そこに至る前の、ひらけた場所として発信を強めて行きたいなと。

これから沢山公開することがあるのでお楽しみにお待ちください。
あと多分お金は少しかかるので、何かしらの方法で稼いでおいてください。
しかしまあ、無料で楽しめるものが増え過ぎましたよね。
価値が揺らぐのもよくわかります。

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日曜日の話。

友人バンドの復活ライブを観て、優しい気持ちになっていた帰りの電車の中。
乗り換えを経て、後は最寄りまで数分揺られるだけ、といった時に、ギターを抱えた20歳前後の男性が乗ってきて、人波に押されるまま僕の横へ。
彼はスマホを弄るでもなく、なんだか憂鬱そうな顔をして窓に映る自分自身を眺めていました。

僕が他人のことをとやかく言える立場で無いのは承知の上でも、心配になってしまうくらいの眼差し。
彼が一体どんな人で、どんな状況で音楽をやっているのかも全くわからない。
そもそも、これは勝手な憶測に過ぎず、悩んでなんていないのかもしれない。

そんなことを思えるくらいには、自分はそこそこ長く音楽をやっている側の人間になってしまったのだなあと。
何様なんだ俺は、なんて考えていたところで、彼は降りていきました。
僕の最寄りの隣駅でした。
エフェクターボードに貼ってあるパスはよく見えなくて、少し寂しかった。

「そうか明日は月曜日か」
曜日感覚が欠落している人間には然程関係の無いこと。
とはいえ日曜日の22時過ぎに帰路につく人々からは、どこかどんよりとした空気を感じなくもありません。
月曜日を迎える感覚、そのルーティーンを少しだけ羨ましく思う自分がいるのもまた、それなりに生きてきたからなのでしょうか。

最寄り駅を出てコンビニに寄ると、疲れた顔の女性がひとり。
彼女もまた…なんて勝手に思っていると、おもむろにドリンク棚から缶のコーラを取り出していました。
500mlの缶のコーラ。ああ、これ安いし、見つけると少し嬉しくなるんだよな。
ペットボトルと違って、開けたら飲み切らないといけないのがちょっとキツいけど。
ここら辺で「他人の観察をしている自分」になんだか嫌気が差し始めましたが、コーラを手にしてレジに向かう彼女は、少しだけ明るい表情に変わっていたように思います。

それぞれの月曜日を経て、今日は火曜日。
次の日曜日には彼や彼女は何をしているんでしょうか。
多分もう会えない、知らない人たち。

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あと1ヶ月したら、新しいシングル「Garden」がリリースです。
リリースイベントは6月29日。
現在はプレイガイドでのみ、チケット販売中です。

自分達の空気を持っていて、それを貫いているアーティストしか出ません。
ヨルニトケルもこの作品を機に、次のステップへと参ります。
色々と楽しみにしていて下さいね。

それでは、いってらっしゃいませ。

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fusetatsuaki

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「気が触れた3月のこと」という自分で作ったキャッチフレーズの通り、終わりを目前にして自分の中の「3月」が発症しました。

虚無感に暴力的な感情が乗っかる感じです。
4月になってもこれを引き摺ると、サクッとパタッといける気がしてしまったりします。
その流れで「blooming suicide」という曲の歌詞も書きました。昔。

3月はライブが比較的多めで、尚且つ新体制で初の遠征とか、初の新曲披露とか、気張ってやることが多かったせいもあり、ようやく無気力のスイッチを入れて良い状態になったんだろうなあと。
全然いらないんですけどね。逆やる気スイッチ。

こんな風になった時にやるべきことというのはわかっていて。
普段もそうなんですけど「自分の空気が悪くならない/自分が空気を悪くしない、そんな環境に自分を置く」ということをするべきで。

要は嫌な気分になりそうな場にはいかない、自分が行って周りの人を不快にさせそうな場にもいかない、ということですね。
「ひとりでいる」というのが最適解に見えるかもですけど、意外とそれは違ったりもして。
なのでこんな面倒な言い回しになるわけなんですが。

ただ、このターンに入ると嘘みたいに言葉が生まれてきます。
きっと感情の起伏が大きくなるからなのでしょう。
同時に曲もつくりたくなります。
なるほど、これが「命を削る」というやつなのか、なんて少し思ったりもします。
いやいや、削りたくない。
「サクッとパタッといけちゃう気がする!」とはいいつつも、根本的には生きていたいので。

電車に乗りながら、奇声をあげる子供や鼻唄を歌うサラリーマンに嫌気が差したらそれはもう重症。
悪意を向けられたわけでもないのに、名前も知らない誰かにこちらが悪意を向けるなんて。
そんな気分になってしまうのもまた、自分が綺麗な人間では無いからなのかもしれません。

とはいえ、泥に塗れてでも何かをあらわした人や苦しみ抜いた後になにかを成し遂げた人を「美しい」と思える心が在るように、僕らどれだけ汚れたって美しくはなれるはずなんです。

春が来ますね。





















fusetatsuaki

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