皆さんは好きな楽曲のタイトルを、ちゃんと読めていますでしょうか。
これは決して難しい問い掛けをしているわけではありません。
「当て字が多用されており一見して読み方がわからない」
「タイトルと曲中になんらかの仕掛けがある為に読み方がわかりづらい」
「そもそも読ませる気がない」
いわゆる「アーティストの意向」というやつで、タイトルの読み方がわからないor本来の読み方と違う、なんてことが稀にあったりします。
「自分の楽曲にそういう曲ってどのくらいあったっけ…?」
と見返した所、数曲そういう「難読タイトル曲」が見受けられましたので、今回はそれらの正しい読み方と、何故そのようなタイトルになったのかというエピソードを軽くご紹介していきたいと思います。
(廃盤になった音源に収録されている曲も含めて、発売順に解説していきます。)
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「si(g)n」
(2013年発売:限定シングル「制裁は7月に」収録)
→「サイン」と読みます。
"発するサインを受け取った時、そこに独りよがりな罪の意識が生まれる"という意味を持ちます。
「g」を「自慰」として「sin=罪」に内包させることで「sign(サイン)」と読めるタイトルにしました。
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「p/v」
(2013年発売:限定シングル「制裁は7月に」/ミニアルバム「美しい生活の為に」収録)
→「ピーブイ」と読みます。
「プロモーションビデオ」の略称のPVと同じ発音です。
"punishment≠vanish"(罰は消えることはない)という文章を略してタイトルの表記としました。
先述の「si(g)n」と共に限定シングルに収録することで、対比として「罪と罰」という関係性を曲同士に持たせたという意図もあります。
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「henrietta」
(2013年発売:ミニアルバム「美しい生活の為に」収録)
→「アンリエッタ」と読みます。
「ヘンリエッタじゃなくて?」と聞かれたことがあるのですが、それはそれで正解です。
これは完全に作者の意向です。
英語読みならヘンリエッタで正解なのですが、フランス語読みをするとアンリエッタになるのです。
"Anrietta"という表記がなんだかしっくり来なかったということと、聴いてきた音楽や読んでいた小説、当時第二外国語としてフランス語を勉強していた…という背景もあって、アンリエッタと読むことにしています。
街を抜け出す歌なので、なんだかその辺の地域が舞台になりそうだなあと、ぼんやり思ったりもして。
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「aknowll」
(2014年発売:EP「さようなら、真冬の死神」収録)
→「アノール」と読みます。
2010年頃に制作した楽曲で、冷たい冬の景色について歌った曲です。
「クノールカップスープって冬に飲むと最高だよね」という会話から「クノール」という言葉の響きが気に入り、タイトルに反映させたいなと思ったのが始まりでした。
歌詞内にあるキーワード「知っていた」という部分から「all know(全て知っている)」という言葉を引っ張りだし、アナグラムすることによって「aknowll(アノール)」というタイトルになりました。
響き優先という、珍しい経緯で生まれたタイトルです。
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「ghost(in the xxxx)」
(2015年発売:EP「pictured black heaven」収録)
→「ゴースト」と読みます。
この手のバンドにありがちな「()の中は読まなくていい」というアレです。作者の意向。めんどくさいですね。其れがいい。
敢えて読むとするなら、続きの部分は「イン ザ マボロシ」と読みます。
歌詞を読むとわかる人にはわかるのですが、他曲へのリンクを匂わせる描写があり、また、曲中でも「xxxx」を言葉にしている箇所があります。聞き取りづらいけど。
これまで明言してはいなかったのですが、これを踏まえて聴くとまた広がるんじゃないかなあと。
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「a day u me」
(2015年発売:EP「pictured black heaven」収録)
→「アダユメ」と読みます。
"とある日のあなたとわたし"という意味を持たせたかったので、タイトルを日本語ローマ字表記にした上で、英語でその意味になるように分割してあります。
「あだゆめ」というタイトルの意味はそのままに、情景的意味も付与したかった故のギミックです。
変拍子を多用していることから、タイトルの難読性も相まって気に入っています。
意図が汲み取られているのか、結構人気があるので、「あの曲好きです。ア デイ…!」と良く言われます。
「そうか!読み方わからないのか!」と気付いたことから、今回のブログ記事執筆に至っております。
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「傀儡」
(2018年発売:デモシングル「femme fatale」収録)
→「くぐつ」と読みます。
"あやつり人形"という意味で、単語としてそのままの意味のタイトルです。
「傀儡政権(かいらいせいけん)」という言葉があるように、「かいらい」とも読めますし、しかも意味は変わらないので、迷う方もいるのではないかと。
歌詞の中ではハッキリと「くぐつ」と歌っているので、よく聴いたり歌詞カードを見た方は判別出来ていたのではないでしょうか。
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「femme fatale」
(2018年発売:デモシングル「femme fatale」収録)
→「ファム・ファタール」と読みます。
先述の「henrietta」の件からもおわかりいただけるかと思いますが、僕はフランス語表記を好む節があります。
この言葉はフランス語で「運命の女/魔性の女(男にとっての)」という2つの意味を持つ言葉であり、フランス語を勉強していた時代に出会い、「この言葉に負けないようになれたら使おう!とずっとあたためていた言葉でもあります。
説得力というかなんというか、若過ぎた自分には語るには不相応に思えたというか。
あくまで自分基準ではありますが、ようやくこういう歌も歌えるようになったんじゃないかなあと。
ここまでの自分達の集大成のような曲で、ひとつの終着点でもあります。
フランス語を使った理由は、なんだか日本語でも英語でも、情景がしっくり来なかったからです。
とても良い響きだし、言葉の持つ意味が素晴らしいですよね。
声に出して読みたい(けど読み方がわからない)タイトルについてまとめてみました。
今回登場した殆どの歌詞はこちらから閲覧出来ますので、ご興味を持って下さった方は是非。
音が無くても楽しめると思います。
今回は各曲のエピソードやら背景に軽く触れてみましたが、作者としてはもっと深くお話しすることも出来ます。勿論、今回登場しなかった曲についても同じです。
ただ、楽曲の持つ「余白」から、受け取り手である皆さんが思うことも沢山あると思うので、また違う形で、作者なりの見解やらエピソードは語ってみたいと思います。
そして機会があれば、歌詞を読み解いている皆さんの見解も聞いてみたいです。
自分の作品が自分の手を離れて沢山の意味を持つというのは、作家冥利に尽きること。
今年は沢山文章も残していきたいと思います。
fusetatsuaki