【前回のあらすじ】


美容院の過剰なまでの新規開業に否定的だった私は、本当に勝ち残れる美容院には何が必要なのかを考えていた。



そこで出た必要な要素は


『独創性』
『明確なコンセプト』
『永続的な需要』


この3つが備わっていることだった。


しかし、そんな美容院はどれだけ考えても具体的なアイデアが出ず、サロン出店は諦めていた。


第1話 詳しくはこちら




【第2話】  はじまりのメール



原宿の面貸しサロンatreveで働きはじめ半年が過ぎた頃、1通のメールが届いた。


それはこれまでに2〜3回担当した、髪が薄いことにコンプレックスがある男性のお客様からだった。


そのメールはこういった内容だった。

※お客様に許可を頂いているので、原文のまま紹介します。




----------------------------------------


宮本さん、こんばんは。

自分の事話します。

本当は自分は今、会社を休職しています。
もう1年と少し経っています。

去年の3月に転勤をしましたが、転勤先でうまくいかず、日に日におかしくなりうつ病になってしまい、転勤から半年後の去年の秋、休職をしてしまいました。
ハゲが進行し、いろいろ言われた事もうつ病になった原因の一つだと思います。

心療内科に通いながら、植毛の手術を受けましたがうまくいかず、訳わからなくなっている時に宮本さんの事を知りました。

何度かメールをしたりしましたが、予約を入れるに至らず...
20年以上人にカットをしてもらっていない自分にとってとても高い壁でした。
都内のおしゃれな美容室でカットするなんて考えもしませんでした。

勇気を出して予約を入れた時は緊張しましたし、実際にカットする当日は、心が破裂しそうで、美容室の前の通りを行ったり来たりして逃げ帰ろうかと思いました。

そんな自分を宮本さんは温かく受け入れていただきました。
宮本さんは薄毛の自分の要望をちゃんと聞いていただき、その中での最良の提案をし、カットしていただきました。
その日の帰りの心の開放感と言ったら、言い表せないくらいの素晴らしいものでした。

あの日から少しずつ良くなり、できる事が少しずつ増え、外出も帽子をかぶる事なくできるようになり、古い友人や会社の同僚とも会えるようになりました。
10月にはボランティアを始め、今月は旅行にも行けました。
本当、少しずつ少しずつ良くなりました。
復職まであともう少しです。

ある日宮本さんが『以前よりも元気になられて』とおっしゃっていただいた時に、宮本さんはちゃんと人を見てらっしゃるなぁと思い、話そうかと思ったのですが、結局言えずじまいで...
仕事の話の時も嘘をついていました。
本当すみません。

宮本さんのテクニックは、うつ病も改善するほどの素晴らしいものです。

いつ薄毛が改善するかわからない物にお金をつぎ込んでいたのは時間の無駄でした。
もっと早く気づきたかったです。

本当感謝しています。
口うるさい客だなぁと悪く思わないでください。
これからもよろしくお願いします。

長々とすみません。
月曜日伺った時にまたお話ししましょう。
失礼します。


----------------------------------------




私はメールを何度も読み直した。



嬉しかったのはもちろん、辛かったんだろうなとか、何度も書き直したんだろうなとか、メール送るのも勇気がいったんだろうなとか。

様々な思いが頭を巡り涙が出た。





私自身、髪が薄くなることや、おでこが広くなることが昔からコンプレックスだった。


髪を扱う仕事をしている事を後悔しそうになる時もあった。


コンプレックスのことは人に相談しにくいものだ。最新の薄毛対策や薬のこと、増毛や植毛のことなど情報収集に勤しんだ。


情報収集したことに美容師専門の知識を交え、薄毛をカバーできるカットの注文方法やセットの仕方、オススメのスタイリング剤などを匿名のブログで発信した。


発信と言ってもリンクを貼ったり、タグ付けしたりするわけでもなく、ただ書いていただけだったので最初の数ヶ月は0PVが続いた。



しかし私と同じくコンプレックスを抱える人の情報収集能力は凄まじいものがあり、ジワジワPV数も伸び出し、半年ほどで多い日には1日1000PVを超えるようになっていた。

1000PVを超えたあたりから、髪型の相談や、遠方だが髪を切って欲しいとの連絡が増えていた。



このお客様も同様に、このブログで私のことを知り、髪を切って欲しいと依頼があった1人だった。




そして顔出しなし、サロン名公開なしでの匿名投稿にもかかわらず、ブログからひと月5〜10人ほどのお客様が来るようになった。

もちろん皆同じ悩みを持っており、カットをするとすごく感謝され、同様のメールを多くいただくようになっていた。





私は少しずつ男性専用の美容院を意識し始めていた。






つづく






【あとがき】


このお客様からのメールがなかったらサロンはやっていなかったかも知れない。

自分のコンプレックスを笑える人もいれば、そうでない人もいる。
コンプレックスは心をも蝕む。

周りが想像しているより当人ははるかに苦しみ悩んでいるものだ。
それを少しでも知っておいて欲しいと思う。



さて、最近では

『独創性』
『明確なコンセプト』
『永続的な需要』

の3つの条件に加え、新たな4つ目の条件があるのではないかと考えている。



それは『正義』だ。


『正義』という言葉だけ聞くとクサく聞こえるかも知れないが、そのサービスや技術が誰かの役に立っていること。
誰かが喜んでくれること。
誰かの笑顔が増えること。

そんなことが『正義』なんじゃないかと。



仕事を永く続けていくには、やっている事は正しいと信じられる『正義』が必要だと思う。





社名及びサロン名でもある『INTI(インティ)』。

その由来はインカ帝国の太陽神の名前だ。


微力ながらも、誰かにとって明るく照らす太陽のような存在になれればと思う。




_var_mobile_Media_DCIM_112APPLE_IMG_2545.JPG
_var_mobile_Media_DCIM_112APPLE_IMG_2546.JPG

写真はブログに送られてきたメッセージ。この頃から同様のメールが増えてきた。
嬉しい反面、コンプレックスを扱う責任の大きさを考えさせられる。






【はじめに】


このブログは初めてのサロン出店からまもなく1年を迎えるどこにでもいる美容師が、その時々の気持ちの忘備録、ならびに自分への戒めとして書き綴る、美容院経営者目線のブログです。


今のサロンが軌道に乗り、ヤッホーい!ノッてるぜー!ってなった時に、このブログを利用して更に大儲けしたいという純粋な動機で始めます。


40歳を目前にし、まだ何も成し遂げていないし、成功もおさめていない私が、あたかも成功した人が振り返って書く様なブログを成功する前にに書いてみようと思います。
ちなみに自分の心のつぶやきは【あとがき】に書こうと思います。

【あとがき】内の心の声は一部の人にとって、表現や文言が不愉快に感じることがあるかもしれませんが、我慢していただければ幸いです。



あ。余談です。

「あたかも」で思い出しましたが
昔、日本語学校に通う外国人留学生が
「あたかも」を使って短文を作れ
というテストに対し

「プリンが冷蔵庫に あたかも しれない。」

と答えていたのを思い出しました。


では、はじまりです。




------------------------------------------------




【第1話】 3つの条件





2016年3月
渋谷・神南にmen's hair salon「INTI」オープン。





オープンの2年前、私は原宿のヘアサロンBALESから独立、株式会社インティを立ち上げた。


独立後は同じ原宿にある業務委託サロン「atreve」でサロンワークをしながら、タレントやアーティストのヘアメイクを続けていた。
atreveの歩合率は63%と当時としては非常に高く、そこで働く人全員がフリーランスという全く新しい型のサロンだった。



独立当初、ヘアサロンを出店することに否定的だった。



なぜなら、この界隈に美容院はすでに多すぎるし、自分より美容師として優れている人も多すぎる。
しかも月の半分は撮影に出ている。



そんな状況下で店を出し、同じ土俵に立ったところで勝ち目なんかない。



そんな理由で出店に対し否定的な一方、どんな条件が揃えば勝算があるのかをずっと考えていた。




その条件を考える中でいくつかの答えにたどり着いた。



それは


『独創性』


『明確なコンセプト』


『永続的な需要』


この3つを持ち合わせることが重要ということだった。


この3つは今も出店に際し、すごく重要な条件だと考えている。




私なりの解釈を少し具体的に書くと



『独創性』
世に溢れていないもの。
独自の技術やサービス。
そして斬新なアイデア。


『明確なコンセプト』
何がウリなのか、どんなサービスを提供するのかが明確。
何を求めている人が行けば良いのかなどターゲットも明確。


『永続的な需要』
ある一定数の需要があること。
流行りなどの一過性のものではなく、5年10年と長期的に需要が予想されること。

これらを1つ欠かすことなく全て満たすこと。




とはいえ具体的なアイデアはたまに思いついても詰めが甘く、これだ!といったのは浮かばなかった。




そんなフリーランスで働きだして半年ほど経ったある日、一通のメールがPCに届いた。



そのメールは出店に向けての大きな一歩となった。



つづく




【あとがき】

今回書いたこの3つの条件は、スタッフが辞めない店づくりとか、新規がどうとか来店サイクルがとうとか、そういうことよりもっと根幹にあるお店が人を呼ぶ上でとても大事な条件だと考えてる。

この条件に妥協したり、詰めが甘かったりすると(そもそも設定がないのは問題外)サロン経営はうまくいかないような気がする。

もしそんなものはないとか、スタッフは自店のコンセプトを理解してないけど、売上立ってるからなんとかなってるって美容院は、紛れもなく個人の集客力のお陰。
個人の力に頼るサロン経営は諸刃の剣で、力のあるスタッフが辞めることのリスクが大きいのでは。

あと、隠れ家プライベートサロンとかはコンセプトではなくて、分かりづらい場所にあって店が小さいっていうただのお店の説明。
誰に向けて発信しているのかが重要。

これまでの顧客や土地に依存しているだけじゃ新しいことはできないのかも。

PBpeEXxpX0.jpg写真は会社ロゴ案。 アウトドアブランドCHUMSをイメージというかまんまパクリ。



↑このページのトップへ