月別アーカイブ / 2020年10月

ルイを演じる時、心にあった景色です。

『たかが世界の終わり』
今夜21時から本番配信です。

次回、最後の配信は11月1日(日)です。
よろしくお願いします。


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心から

2020.10.24
藤原季節

『たかが世界の終わり』について、もう少しわかりやすく、僕自身が理解できるように書いてみたいと思います。

これは、演劇です。
配信というツールを使った演劇。

これまで演劇ドキュメンタリーという形で、その稽古の様子をYouTubeで配信してきました。
このドキュメンタリーを見てから本編を見るのも良いし、人によっては本編を見るまでドキュメンタリーは見ないという人もいます。
それは自由です。
見ない方が楽しめるという人もいると思います。
ではなぜドキュメンタリーをやってきたのか。
実はそこが大切で。
この作品の中にその答えがある気がします。
答えっていうと、なんか方程式みたいだな。答えとは違う、なんだろう、希望?尊厳?未来?すべてが安易な言葉に感じる。言葉にするのは難しい。
これは公式Twitterの宣伝文。

『たかが世界の終わり』
無観客上演に挑む俳優たちの自主公演。
1時間50分ワンカット。
幾多の困難を乗り越え演劇を立ちあげる彼らの姿に、いつしか物語が重なってゆくー


僕らがドキュメンタリーで残してきた姿に、この物語が重なってゆく。
物語の登場人物だけではなく、ただ一人の俳優・藤原季節としての姿が見えてくる。
ドキュメンタリーも含めて、この数ヶ月、迷宮を走り続けた内田健司さんの演出です。
ドキュメンタリーを見てから本編を見ても楽しめます。
その最終話が今夜更新されました。
8分だけ時間をください。



本番の配信についてですが、二回のみです。
リクエストが多ければ再配信も検討するようですが、基本はこの二回のみ。アーカイブは残りません。

10月24日(土)21:00〜
11月1日(日)20:00〜

アーカイブを残さないということは、
なるべく普段の観劇に近い心境で観ていただきたいということです。可能な限り。
巻き戻しは出来ないので、お手洗いや準備を済ませて、なるべく同じ時間を過ごしてほしいです。可能な限り。


舞台の詳細確認、
そしてチケットのご購入はホームページから出来ます。



劇場。
僕が思う劇場の良さってやっぱり他者がいることだなって思う。特に最近は。
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この間、さいたま芸術劇場の見学ツアーに参加した時の写真。劇場にいる時、僕はいつも一人だ。

劇場にいる時、少しだけ孤独から免れることができる。
というか、孤独を愛することができる。
大勢のお客さん、あるいは少ないお客さんと、同じ空間を見つめている。
僕は彼らのことを知らない。いや知っているかもしれない。彼らは僕のことを知っている。いや知らないかもしれない。よくわからないけど、そんなヒヤヒヤした緊張を感じながら自分の座席に座って、劇が始まるのを待つ。
それはまるで、街。街のカフェ。待ち合わせ。約束。散歩。恋。予感。雑踏。お祭り。音楽。いつもあの子を探している。なんでもいいけど。あのヒヤヒヤはそんな感じだ。
劇が始まると、暗闇の中で再び孤独を味わうことができる。
僕はこの孤独だけは愛してる。

時には本当に知り合いに会うこともある。
僕はそういう偶然が好きだ。

今回の配信に、そういった偶然や予感はあるのだろうか。
正直僕は、今回の配信についてはまだどうなるかよくわかっていない。
でも、配信というツールを使うということはインターネットを通して人と繋がろうとするということだ。繋がることを肯定し、求めているということだ。
離れている。距離が遠い。
それでも人と人とが何かを共有し、あの演劇体験をすることは可能なのだろうか。
開始時刻と同時に皆が一斉に『たかが世界の終わり』を観る。そしてあのラストシーンを迎える。
そのあと、僕らはインターネットを開くだろう。あるいは開かないかもしれない。深い孤独や喜びを一人で味わうかもしれないし、インターネットにいる同じ時間を過ごした人々にアクセスし、出会うかもしれない。
次々に感想をつぶやく人々。つぶやかない人々。
人々とは君のこと。ひとりひとり。拍手の音はひとりひとりの生活者の手のひらから生まれている。それを忘れてない。今回はきっと拍手の音は聞こえないだろう。

なのになぜだろう、いつもより身近に感じる。

それは一つの演劇体験かもしれない。
興味がある。
僕の友人たちは観てくれるだろうか。
スケジュール、合うかな、合わないかな。
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友人。
マジックアワーの彩の国さいたま芸術劇場ガレリア。
青い血脈。

僕はこの劇場が好きだった。
芸術監督は蜷川幸雄さんだった。
僕はここで初めて蜷川さん演出の舞台を観た。
人生が変わった。
そして蜷川さんが蒼白の少年少女を集めて作ったのがネクストシアターだ。
この人たちの芝居に心底憧れた。恋焦がれた。
そのネクストシアターの俳優たち有志が集まって結成されたのが第7世代実験室。
その第7世代実験室が、さいたま芸術劇場の大稽古場・NINAGAWA STUDIOで配信演劇を作ろうということになった。

それが、『たかが世界の終わり』である。
1分間の予告編。
この映像を作ったのも俳優たちだ。




最後に、
僕がこの数ヶ月最も気に入っていた宮沢賢治の詩を贈ります。
この詩を持ち歩いて彩の国に通っていました。



『告別』

おまえのバスの三連音が
どんなぐあいに鳴っていたかを
おそらくおまえはわかっていまい
その純朴さ希みに充ちたたのしさは
ほとんどおれを草葉のようにふるわせた
もしもおまえがそれらの音の特性や
立派な無数の順列を
はっきり知って自由にいつでも使えるならば
おまえは辛くてそしてかがやく天の仕事もするだろう
泰西著名の楽人たちが
幼齢弦や鍵器をとって
すでに一家をなしたがのように
おまえはそのころ
この国にある皮革の鼓器と
竹でつくった菅とをとった
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けれどもいまごろちょうどおまえの年ごろで
おまえの素質と力を持っているものは
町と村との一万人のなかになら
おそらく五人はあるだろう
それらのひとのどの人もまたどのひとも
五年のあいだにそれを大抵無くすのだ
生活のためにけずられたり
自分でそれをなくすのだ
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すべての才や力や材というものは
ひとにとどまるものではない
ひとさえひとにとどまらぬ
云わなかったが、
おれは四月はもう学校に居ないのだ
恐らく暗いけわしいみちをあるくだろう
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そのあとでおまえのいまのちからがにぶり
きれいな音の正しい調子とその明るさを失って
ふたたび回復できないのならば
おれはおまえをもう見ない
なぜならおれは
すこしぐらいの仕事ができて
そいつに腰かけているような
そんな多数をいちばんいやにおもうのだ
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もしもおまえが
よくきいてくれ
ひとりのやさしい娘をおもうようになるそのとき
おまえに無数の影と光の像が現れる
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おまえはそれを音にするのだ
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みんなが町で暮したり
一日あそんでいるときに
おまえはひとりであの石原の草を刈る
そのさびしさでおまえは音をつくるのだ
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多くの侮辱や窮乏の
それらを噛んで歌うのだ
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もしも楽器がなかったら
いいかおまえはおれの弟子なのだ
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ちからのかぎり
そらいっぱいの
光でできたパイプオルガンを弾くがいい
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2020.10.19
藤原季節

甥っ子が生まれた。2020年に生まれた。いま、世の中はなかなかひどいです。目を背けたくなるニュースや匿名のコメント。望みを失いそうになります。僕は俳優をやっています。誰かの心を洗える存在になりたいです。だから目を背けずに戦っています。新時代の幕開けを感じます。幕が上がると、たぶん照明はすごく暗くて霧がかかっている。そこに差し込む、光。
生まれてきてくれてありがとう。
失うばかりじゃない。破壊だけじゃない。再生してゆくんだ。大切なことを教えてくれた。愛を体に詰め込むようにして、僕はまた東京に向かう。

友人へ。3人の娘の父親になった友人へ。友人の娘へ。
曇りなき眼で世界を見つめる素敵な人になってください。このDVDを送ります。
それからもし良かったら僕も一緒に守らせてください。
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『たかが世界の終わり』
余命わずかな主人公が、そのことを伝えるために実家に帰る話。主人公の名前はルイ。僕は今日もルイの台詞を呟きながら歩いていた。

僕が思っているのは、
僕は、かなり大きな叫び声を上げるべきだって。
谷いっぱいに響き渡るような長い、歓喜の叫び声を。
自分に与えなくてはならないのはこうした幸福感だって思うんだ。
思いっきり遠吠えすることだ。
でも僕はやらない。
やらなかった。
僕はまた進み出す。
砂利を踏み鳴らす足音だけを響かせて。

演出の内田健司さんに言われた言葉が忘れられない。
「なぜ変えられるって思うんだよ。変えられないんだよ。そのことをどうして受け入れられるんだってことを僕は言いたいんだ」
僕は今思う。受け入れられない。なにを?いろんなことを。どんなに願ったところで台詞は進んでいく。ルイの時間は進んでいく。止まらない。そのことを許さない。受け入れてはいけないんだ。それは僕の弱さでしかないから。でもルイは弱くなかった。望みを失わなかった。その希望の結晶が『たかが世界の終わり』なんだ。大切なのは僕の気持ちじゃない。本に書かれてあることなんだ。この人たちは本当に素敵な俳優。本物の俳優。僕はまだまだ。心から思う。役者やってて初めて悔し泣きした。
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僕は許さない。この気持ちが次の作品へと僕を向かわせてくれる。僕がやってることなんて小さいことなんだろう。世界の片隅でもがいているだけ。ボロボロの靴で歩いているだけ。線路の上を。スタンドバイミーだ。僕は少年でいたい。車ですぐに移動できるような青年じゃ嫌なんだ。線路の上を歩いていたいんだ。
『佐々木、イン、マイマイン』に出演した沢山の少年たち。彼らは懐に隠した拳銃を僕に突きつけようとしている。出演したわーいなんて思ってるやつは誰もいない。狙っている。不甲斐ない演技したら撃ってやるぞと。でも残念ながらそれはさせない。
何故なら僕も少年だからだ。
銃口を突きつけているのは僕も一緒だからだ。
負けないよ。だから沢山戦おうよ。逃げも隠れもしない。
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『佐々木、イン、マイマイン』が少年たちに愛される映画になりますように。これしか考えてない。それ以外のことはどうでもいい。


自宅で待機していた頃、オンライン映画の誘いがあった。タイトルは『curfew』。たしか鈴木勝大が考えた。
主演の諫早幸作の演技が良い。
正直反省してるんだ。僕はオンラインでの会議ややり取りが苦手すぎて途中で逃げ出したから。演技はしたし、幸作とのセッションは幸せだったけど、でも逃げ出したから。
その作品が下北沢映画祭で観客賞。
オンライン映画が映画祭で観客賞。
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左肩が痛いのかな。
でもこの写真すごく気に入ってる。
諫早幸作。すごく面白い。ナメてると喰い殺される。お腹を空かせた野良犬。つまんないときは笑わない。怒られたときはへこむ。でも大事なときに必ずシュートを決める。

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curfew がU-NEXTで配信されることになった。
すごいよ、みんな。おめでとう。逃げ出してごめんなさい。貴方たち、すごいよ。

はやく映画作ろうぜ。
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個人的な話だけど、去年も下北沢映画祭で観客賞をいただいた。2年連続の観客賞。素直に嬉しい。
『中村屋酒店の兄弟』
11月にテアトル新宿で上映が決まった。すごい。おめでとう。テアトル新宿か。すげえな。憧れなんだよあの映画館。
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お腹が空いたので僕は蕎麦を食べます。
良い一日を。
風邪をひかないように。

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