高校の夏、剣道をやめた。

あの時の顧問の先生の悲しそうな顔を今でも覚えている。学校中から恐がられてた先生だったけどその時は何も言わなかった。ただ悲しそうな顔をしていた。
その辺りから自分の人生は大きく変わっていったと思う。授業にもあんまり行かなくなって、思えば眠ってばかりの青春だったと思う。
ちびっ子の頃からライバルだった仲間はどんどん強くなっていって、立派に高校・大学を卒業して今は教師になったやつもいる。あのとき剣道をやめていなかったら僕もそうなっていたのかもしれない。それに辞めてから疎遠になってしまった剣道部の皆ともずっと一緒にいられたかもしれない。お菓子を片手に自転車を漕ぎながらありえない坂道をスイスイ登っていく先輩たちの背中は今でも遠い。

でもそれと同時に、もしやめていなかったら今ここにはいないんだ、とも思う。あいつにもあの人にもあの子にも出会えてなかったんだって。
もちろん高校を卒業してからの6年間は僕にとってはなかなか大変だったし、今も相変わらずだけど、その6年間にはちゃんと価値があったと思う。現在進行形で。
あの時、続けた先に一生の友達がいたのか、それとも辞めた先に一生の友達がいたのかなんてわからない。選択は怖いことだし、あのときああしていたらなって思い続けることもあるけど、今自分がいる環境を好きになることから始めていかないとって思う。ちびっ子剣道少年だった頃に先生から教えてもらったことは今も自分の中に生き続けてる。何もあの選択で全てを失ったわけじゃない。


「部屋の乱れは心の乱れ!」


「はい、先生!」


つってね。


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