
あたしが「M」だと気付いたのは小学6年。
きっかけは弟が捕ってきた
レンガ色のザリガニちゃん。
泥の匂いのザリガニちゃん。
そんなザリガニちゃんが
大きく両腕をあげ大きなハサミを空にかかげ
激しく威嚇したのを目にしたとき。
震えた。
胸が高鳴り、唾液が出た。
あのハサミであたしの白く薄い皮膚を切り裂いて欲しい。
そう思った。
あたしはゆっくりハサミに向かって小指を出した。
ザリガニちゃんは左のハサミで小さな小指の尖端を挟んだ。
チクリ
針が刺さったようなわずかな痛み。
無機質な黒い目玉のザリガニちゃんは
指を挟んだままあたしを見上げている。
「痛い」
そう呟いた。
小さな「痛い」が気持ち良い。
あたしは挟まれたままの小指と親指でハサミをつかみ、もう片方の手でザリガニちゃんの胴体をつまんだ。
そして左右の手首を反対方向に回転させた。
簡単にザリガニちゃんの左腕と胴体は分離した。
切り離したのにハサミはあたしの小指に食い込んだまま。
それを見たとき下半身が少し湿った。
初めて濡れた。