女優・安達祐実さんの日常を切り取った「安達祐実 official gallery」。SNSやテレビ出演時にもたびたび話題になってきました。この写真を撮っているのは、夫であり、写真家の桑島智輝さん。
お二人の出会いは、2013年に発売された安達さん芸能生活30周年を記念した写真集「私生活」。2年にわたって私生活に密着したもので、桑島さんの手によって撮り下ろされました。その数、実に1万枚以上。写真集という形になったあと、安達さんは妻に。
夫婦となった今も、日常を撮影し続けています。プリントされた写真は、述べ約2万4000枚以上。昨年12月に放送された「アウトデラックス」出演時、中には放送できない写真も多いと突っ込まれるなどして話題を集めました。
空前のカメラブームの中、毎日SNSでシェアされていく大量の写真を「切ない」と語る桑島さん。そんな桑島さんが現在唯一、「生きた証」を記録する場所として解放しているのが「yumi adachi official gallery」です。オフ感満載の安達祐実さんを感じることができる唯一の解放区。そこには、あどけない少女の表情と、時には妖麗な一面を捉えた女優の日常が切り取られています。フィルムで撮影された、悶絶するような安達さんの可愛さと日常風景は、なんだかちょっとほっとするような不思議な気持ちを与えてくれます。
無理によく見せなくても良い。一回のシャッターが捉える、”フレームの外側”を感じて欲しい。安達祐実 official gallery から見る、桑島さんの写真論とは。
プロフィール:桑島智輝(くわじま ともき)さん
1978年岡山県生まれ。武蔵野美術大学卒業後、写真家の鎌田拳太郎氏に師事。2004年にフリーのカメラマンとして独立し、2010年に「株式会社 QWAGATA」設立。2013年に女優・安達祐実の芸能生活30周年を記念した写真集「私生活」を出版後、結婚。現在は妻・安達祐実の私生活を切り取った写真を掲載する公式サイト「安達祐実 official gallery」の運用のほか、女優、俳優、アイドルなど多数の誌面、写真集を手がける。
公式サイト:http://www.qwajima.com
「安達祐実 official gallery」制作秘話
ーーサイトを公開した経緯は?
2016年にリニューアルしたんですよね。それまでは、いわゆる一般的なタレントのホームページだったんです。写真もたくさん撮ってたので「写真メインのサイトが面白いんじゃないの」って。他はもういいだろうっていう感じで(笑)
安達祐実 official gallery
ーー安達さんとお二人ですすめてらっしゃるんですか。
そうですね。リニューアルの時は、彼女が事務所に話を通して。デザイナーさんがいて、デザインを相談して。
公開する写真は、僕が何枚か選んで、彼女に見せてOKって。だいたいOKなんですけどね。
一度小さく出力して、何枚かを組んでアップしていく。頻度は気まぐれです。スキャンしたものを徐々に更新しています。
ーーサーバーダウンしたりもしてますね。
もともと、そんなに大きなサーバーじゃないんですよ。だからダウンしやすい。
前に落ちた時も、放っておいたんですよ。コツコツひたむきにやる感じが良いんじゃないかなって。またダウンしてるな、って思われるくらいの方が面白いなって。
写真家のホームページって、写真を延々と載せていくものが多いじゃないですか。タレントさんでそういうことをやってる人が珍しいっていうだけだと思うんですよね。
ーーSNS時代ですけど、あえて公式サイトで、あの形態にされているのはどうしてですか?
インスタ、Twitter ね。流れていくじゃないですか。なんだか切なくて。"いいね"とか"お気に入り"しても、埋没していくじゃないですか。まだ馴染めないんですよ。
形になるものが好きなんですね。一番良いのは、本なんですけど。手っ取り早いのが、こういう形(official gallery)だったんですよね。
ーー掲載されている写真は、どのように撮影されているんですか?
「あ、」って思った時に、すぐ撮れるようにしてますね。
安達祐実 official gallery
ーー現像する写真は、厳選されているんですか?
全部プリントしてますよ。1日5枚ずつくらい撮ってて。87冊目です。(2017年6月時点)
ーー1冊目のはじまり。安達さんの撮影はいつから?
写真集(2013年発売「私生活」)が始まりです。彼女のヘアメイクをやってた人が僕の知り合いで。撮ってみないかっていう話しになって。
写真は、2年かけて撮影したものなので、2012年くらいかな。芸能生活30周年を記念したもので、”記録”としてはじまったんです。もともと出版予定があったわけではなくて。集英社に持ち込んで出版できたものなんですよ。
ーー被写体としての安達祐実さん。どのようにとらえているんでしょうか?
凄く面白いところで。
田舎のおばあちゃんでも知ってるくらいじゃないですか。その人が身近にいる感覚と、家族っていう感覚。大好きな人を毎日撮れる幸福。芸能人を撮れる報道性。その2面性が面白いと感じてます。スクープとまではいかないんですけどね。
ーー女優がお家にいる。
撮影で、彼女のドラマの現場に行った時に、”女優”として扱われているところを見る機会があったんですね。当たり前なんですけれど。その時「この人、有名な人なんだな」って。そういえばそうなんだって思いましたね。
ーーママとしての顔も。
ありますね。いろんな顔がありますよ。
安達祐実 official gallery
ーーお二人は写真とどのように向き合っているんでしょうか。
(安達さんは)撮られるのが好きな方だとは思いますね。自己確認の意味もあると思うんですよ。
そう言ってた時が1回あったと思うんですよね。前の写真集の帯文が「ただ、生きている」だったんです。生きた証の確認作業でもあるような気がしてて。それは僕もそうなんですけど、「生きているんだな」「こうやって過ごしたな」っていう記録なんです。とにかく記録したいんですよね。
例えば何十年後、二人が絶滅した時に、生きた証を残しておきたいというか。物体として死んでも、モノとして生きるものを残したいっていうのはあります。
安達祐実 official gallery
ーー棺桶の話しもありましたね。その後で、個展にできたらなんて話も。
アウトデラックスの時は、(企画的に)アウトな扱いということもあって、びっくりされたんですけど。写真家として話をすると、たぶん普通のことですよ。
「こんなにたくさん撮ってるの」って言われることもありますけど、写真家はみんなたくさん撮ってると思うんですよ。それは風景かもしれないし、日常かもしれないし。僕の場合は、被写体が変わっているからそう見えるだけなんです。そういうもんです。
愛であり、業。夫で写真家としての日常
ーー写真家として、夫として。どんな気分で撮影されているんですか。
両方ありますよ、やっぱり。たとえば、泣いてたりする時に、「大丈夫?」っていう愛情も存在しながら、カメラに手を伸ばしている自分もいる。「大丈夫だよ」って言いながら(笑)情もあるし、非情な部分もあるんですかね。
ーーテレビ出演時にも大きな話題になりましたが、”エロい”写真って何なんでしょうか?
最中の写真はないですね。そういうの撮ってるのか、撮ってないのかがわからない写真っていうのが面白いんですよ。マツコさんも言ってた、いわゆるポルノ小説を読んでるような感じ。”ほのめかし”ですよ。
エロ本はバーンだもんね。それとは違うよね。説明的じゃないっていうのはある。以前ある写真が「笹食べてる」って話題になったことがあったんですけど、わけわからないじゃないですか。「神社でカマキリ持ってる」のとか。説明的じゃないよね。
安達祐実 official gallery
ーー私生活を撮影し続けること、「理解できない」っていう人もいますね。
わかりますよ。撮られたくない人もやっぱりいて。知人で、あるスペイン人の男性カメラマンの話で、彼の彼女は日常を撮られたくないんですよね。パンツ一丁のところとか。「ホントやめてって」言うと「Oh〜なんでだよ」って(笑)そういう人もいますよ。
ーー安達さんは「うれしい」って言っていましたね。
そういう風に言ってもらえると助かりますね。
フレームの外側に見える面白さ。桑島さんの写真論
ーー桑島さんご自身が使用されるのは、フィルムカメラとデジタル、こだわりはありますか?
(安達さんの時は)フィルムです。仕事の時はやっぱりデジタルですね。用途がね、違うから。
ーースマホで撮影できたり、写真が身近な存在になりました。良い写真を撮影するには、どうしたらいいんだろうって、気になると思うんです。
結局、写真がきれいに見えたり、雰囲気が良く見えるのは、テクニックでしかないんですよ。やっぱり。写真は溢れているけど、つまらないなと思うものもありますね。コアな部分が希薄だと。
ーーつまらないもの。
みんな、隠しちゃうでしょ真実を。技術によって、逆に見えなくしてしまうっていう。例えば「撮りなおす」ことも「整える」ことになりますよね。そこで、写真が捉えたリアリティが一個なくなっちゃうじゃないですか。
それでいったら、フィルムは撮影したものを(現像するまで)確認できないのが良いところ。それで(隠さなくて)良いんですよ。
ーー安達さんのお写真は、フィルムカメラで撮影されているんですよね。
フィルムの方が”温かみ”を感じるしリアリティーがあるっていうのは、あります。
安達祐実 official gallery
流行ってますよね、フィルム。売れることは良いことですよ。ただ雑誌なんかを見ていて感じるのが、フィルムで撮ってることで満足しちゃって、その先がないものが多いなと思うことはあります。
雰囲気でしか写真を撮らないっていうのはね。「何を表現したかったんだよ、被写体の何を見たんだ」って。そういうのが出せないと「フィルムで撮ってることに満足してるんだな」って思っちゃいますね。デジカメで撮れば良いよね。ちゃんと撮れる人は、デジカメでも撮れるし、フィルムでも撮れるんですよ。
ーー良い写真ってどんなものでしょうか。
「チーズケーキ食べたのね」「きれいなカフェ行ったのね」とか、ね。見ただけで完結しちゃう写真も、ありますけれども。写真のフレームの外側のイメージを想像させるものが面白いと思います。
撮影する時、被写体を見て「本当に美味しそう」「本当にこの人が好き」そういう思いって、写真に滲み出るものなんですよね。それはデジカメでも、フィルムでもそう。その人が何を思っているか、被写体の事をどう思っているのか、技術の先の、撮ってる人の思いが滲み出るのが、良い写真だと思います。
安達祐実 official gallery
「加工しない方が良い」創り込めるSNSの先にあるもの
ーー例えばディズニーランドやドレスアップ時のようなキメ込んだ記念写真と、”カマキリ”の写真は全然違うものに見えます。この違いって何なんでしょう。
たぶん、僕はわかりやすい写真がそんなに好きじゃない。なんかよくわかんないけど、面白いっていうのが好きなんです。あえて「ここで撮らないの?」っていうのもあります。
ーー Instagram ではとっておきの一枚をアップする方も多いと思うんです。写真を楽しむというか、自分や自分の世界観をよく見せる場所として利用する。
無理におしゃれ風にする必要はないかなって。写真と、それに文章でよく見せちゃうのあるじゃないですか。実際は、良く見せなくても良いんですよ。見栄を張らなくても、面白いと思うんですよ。
最近、加工できるからなぁ。自撮りを盛るとかね。加工しない方が良いですよ。気持ちはわかるんですけどね。
次を作るのは「これが好きなんだ」
ーーどんな人が次を創っていくんでしょうか?
もちろん上げた(加工した)状態が好きな人もいる。女の子の特有な文化なのかもしれないな。「私はこれが好きなんだ」っていう人が次に残っていくんじゃないですかねぇ。
安達祐実 official gallery
発信地・日本
<文・デザート編集部>
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