昨日、引退の報告を受けました。

タクと私はこう見えて同い年。性格もプレーの特徴もまるで違う私たちですが、いつからか私たちはお互いを分かり合えたパートナーとなりました。

いや、本当のところは、いまだに”彼の本当”がよく分かりません。正真正銘の天才です。私が出会ってきた様々なサッカー選手たちの中でも、一番訳の分からない男でした。

でも、でもやっぱり、私たちは確実に分かり合えていたんですよね。

セットプレーで、私たちのコンビはたくさんのゴールを生み出すことができました。

「分かっていても止められない」

私たちのセットプレーを対戦相手の方がよくそう言ってくださっていました。それは私とタクとの共同作業によって、なし得たものです。

DF新記録となった2007年の4試合連続ゴール。4試合目に私たちはセットプレーのたびにプレッシャーを感じながら臨んだんです。

成し遂げられた時は嬉しかったな。

私はタクのために、タクは私のために。

あの時だけはそんな気持ちでプレーしていました。

私たちが分かり合えたのは、お互いの境遇についても分かり合える部分が多かったからだと思っています。

20代後半に差し掛かった頃には、タクは鹿島の攻撃陣を、私は守備陣を牽引する存在になることができました。

しかし、私たちはある意味で、いつまでも2つ上のゴールデンエイジに隠れた存在でした。

それは楽しくもあり、光栄でもあったのですが、本音を言えば、時に虚しさを感じるときもありました。

私は、少なくとも一度はタクもベストイレブンに選ばれなくてはいけなかったと思っています。そして、タクはもっと世間に評価されて然るべき選手だったと思っています。

ただ、タクは天才だから、ムラがある選手であったことも事実でした。私はそんなところもタクらしくて、天才ぽくて、大好きだったんですけどね。

タクのプレーをピッチレベルで後ろから見ていられた時間は、サッカー人としてなんとも贅沢でした。

極上のトラップ、シーズン終盤で決まって手がつけられなくなる勝負強さ、そして、上手いだけでなく、スペースを察知して動き出す抜け出しのなんとも美しいことよ。

タクはただの天才ではなく、チームを勝たせることができる天才でした。

最後にJFL昇格を果たして引退することも、タクのキャリアを象徴していると思います。

さすがですね。

今年は寂しい出来事が相次ぎました。年の瀬もどこか心が落ち着きません。

パートナーとしての寂しさとファンとしての寂しさと。今はその両方に打ちひしがれながら過ごしています。

何かがこれで終わりってことは決してないのだけど、あの頃の私たちの物語が、今ここにひとつの完結をみた気持ちになっています。