窓際に花を生けた。先程花屋で買ってきたばかりの花はとても瑞々しく、病室と均衡がとれていなかった。椅子に座り、窓から差し込む夕日を眺めた。兄の顔が赤く照らされる。嫌に生々しい何かを突きつけられたような気がした。急に叫びだしたくなって目を瞑る。辺りは静寂に満ちていた。
「兄ちゃんにチコのこと見せたかったな」 
小さな呟きが夕暮れの闇に消えていった。


いつもは閑散とした公民館が今日は大賑わいだ。ケージに入った大小様々な犬や猫たちがつぶらな瞳で見返してくる。ゆっくりと一匹一匹と目を合わせながら歩いていると、正面から大きく手を振りながら松山さんがどすどすと走ってきた。
「りりちゃん待ってたわよ。さぁ、こっちでケーキを作るからおいで。」 
たくさんの犬や猫たちに見つめられながら私と松山さんは調理室へ向かっていった。ガラガラッと立て付けの悪くなった扉を開けると20人くらいの人たちがエプロンを付けて楽しそうに作業していた。こんなにも多くの人たちが犬や猫を飼っているのか、と私は驚いた。空いている席につくと、そこにはまぁくんたち家族がいた。
「あっ、図書司書のおねえさん」
「まあくんこんにちは。ムムのケーキを作りに来たの?」
「うん、この前みんなでケーキを食べてたら、ムムだけいつもカリカリでかわいそうだなって思って。ムムにもケーキを作ってあげようと思ったんだ。」
「そう、まあくんは優しいのね。」
また思わず頭をわしわしと撫でてしまう。まあくんは嬉しそうに目を細めた。この子は何だか猫みたいだなと思った。
「はいみなさん注目」
ホワイトボードの前に立った松山さんが手をはたいて言った。途端にぴたりと会話が止む。
「猫のケーキの作り方は簡単です。みんなで楽しく作りましょう。作り方はホワイトボードにもある通り。分からなかったら私ら職員に聞いてね。でははじめ!」
 今回はここらまで。

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