アルバム収録曲について、最終話である第12話はNo Man, No Cryです!
これはレコーディングが決まってから作り始めた曲で、テーマは明確に決まっていました。
クラシックのようなキッチリとしたアイリッシュ(ケルト)感ではなく、テンションがアガる、アイリッシュ音楽の匂いが満載な曲にする!ということ。
分かりやすく噛み砕いて言ってしまうと、僕たちの大好きなTHE POGUESやFLOGGING MOLLYの匂いがプンプンするやつ!ってことです。
語弊を恐れずに言わせてもらいます。
「偉大なるへっぽこ感」
これに尽きます。いわゆる「パブソング」のノリですね。
THE LIVEツアーでの曲たち(例 Lionなど)と比べてもその差がよくわかってもらえるかと思います。曲のカラーというかテーマが明確になっています。
これはサビの部分がデモとは変わったんですが、しっくり来るものが全然浮かばなくてかなり苦労しました。゚(^ω^;)゚。
考える
↓
出てこない
↓
考える・・・
↓
ボツ
↓
考え・・・
↓
ボツ
↓
かんg
↓
死亡
何でも物事そうかもしれないけれど「やらなきゃ!」って思うと焦ってしまって上手くいかない…という負のルーティンになってしまい、なかなか答えが見つかりませんでした。
そんなある日、KAT$UOさんが曲作りに関して言っていたことで「なるほど」と思うことがあって。
それは「ポップ」と「キャッチー」の違いについて。
これってどちらも正解でどちらも良いものなんだけど、ちょっとニュアンスが違うんだよね!
で、僕らが目指したものは完全に「キャッチー」なもの、なんです。
「キャッチー」
このキーワードが今作「THE ANSWER」の
【最重要ポイント】
になってます。
そんな楽曲制作も締切間近な、ある日のスタジオ。
スタジオでみんなと話しながらギターと歌の弾き語りで「こんな感じどう?」みたいにサビをアドリブで色々なパターンを試していくうちに
「あっ!!!!」
という間に今の形になりました(笑)
どれだけ時間をかけて考えてみても良いのが浮かばなかったのが、みんなとスタジオで気楽にやってみたら数分で出来る、という現象はこの作品では度々起こっているんですが本当に不思議!
キャッチーなものって考えすぎてはダメなんだなぁとも痛感しました。
考えて→みんなの意見をもらって→もっかい考えて→また意見をもらって
ってスタジオのほうがテンポよくみんなから客観的な意見をもらえてスムーズで、「これだよなぁ!バンドってこれだよなぁ!」とバンドの楽しさを再認識できる瞬間でもありました。
「メンバーそれぞれのパートなどについて」
【SUZUYO】
SUZUちゃんの歌うBメロは冒頭のアイリッシュなイントロと同じような歌のメロディーにしたい!と思っていたのですが、中々この手のメロディーを歌メロにすることは無いので苦労しました。
KAT$UOさんと何度も歌詞の文字数や入れ方を考えては崩し・・・を繰り返しました。
「なかなかしっくりこないねぇ」
とレコーディングの歌録りの間際まで考えた末に生まれたのが今の形です。
めっちゃキュートなパートになったし、気持ちいいフックになってとってもお気に入りです!
【KAT$UO】
この曲のように女性ヴォーカルパートがある曲でのKAT$UOさんの歌詞もまた味わい深いものがあります。
例えばRise Againとかね!とってもいい!
女性が歌うことを想定して書いているのか?直接聞いたことは無いんだけど、間違いなくイメージしてますよね。
表現のニュアンスなどが一際繊細に感じて大好き!男性、女性パートを意識して是非とも歌詞を味わってみてくださいませっ!
【LF】【TOSHI】
サビは大合唱!なんですが、レコーディングではガチで何テイクも歌いすぎて皆の喉がやばいことになって、LFさんは喉が枯れすぎてコーラス録り最終日には喋る声もガラガラになってしまいました!。・゚・(*ノД`*)・゚・。
僕も極限状態の喉でコーラスを何回も歌っているうちに、ある種のトランス状態にもなりまして。こんなこと初めてでした(笑)最後の方はまるで宝塚歌劇団に入ったかのようにしっかり発声して歌ってたもん。
その、全員コーラス録りの時にドラムのTOSHIちゃんがコーラスをしっかりやってくれてね!
うちのライブってやっぱり力強いコーラスって絶対必須なんだけど、ドラマーがしっかりコーラスできるってのはすごい強みになります。ライブでの歌のハーモニーの幅も広がるというのは本当に恩恵が大きい。 ナイスコーラスだぜー!
そして、こういう一見騒がしい曲はドラマーとベーシストの腕の見せどころ!このドッシリとした感じはドラムとベースがあってこそのグルーヴ感なんだよね!ライブなんかは格別よ!
【MUTSUMI】
ちょっと分かりづらいかもしれませんが、MUTSUMIの弾くアコーディオンの音色は今作では何種類か使い分けてくれています!
ピアノ、様々なシンセ音、オルガン・・・などなど、MUTSUMIは曲によって色々な音を出してくれていますが、とりわけ生のアコーディオンの音色の違いに是非耳を傾けてみてください。
その音色の違いによって描き出す風景も本当に様々。相変わらず良い仕事するぜ!
【ゲストプレイヤー】
お気付きの方も多いと思いますが今作には気持ちのいいフィドルが何曲かに入っています。
フィドルでこのアルバムに何曲も参加してくれたのは森島玲ちゃん!
元々MUTSUMIのお友達として紹介してもらい、今回も快く引き受けてくれて本当に感謝です!
たくさんの素晴らしい表現の数々!
ありがとうございました!
曲順に関してはValiant Roseが1曲目でこの曲が2曲目!というのがみんなの一致した意見でしたね!
ド頭のイントロの時点でリスナーをノックアウトさせるんだ!って感じで、この曲調はやってても本当にテンションが上がる。
イントロのバンジョーとバスドラムの音だけでご飯4杯は食べれます(笑)
イントロのバンジョーの音量もGypsy Moonのイントロのアコーディオンの音量も今作では凄くこだわったポイントです。
細かいことだけど気を遣うのと遣わないのとでは曲の印象が全く違うものになるんですよね。
大好きなイントロになって大満足です!
というわけで、今回も長くなりましたが・・・
最後に。
【いつかここへたどり着くことがあるかもしれない未来の君へ】
第1話目にも書いたと思うのですが、
「アルバムTHE ANSWERについて」のこのブログは
【いつの日かここにたどり着くことがあるかもしれない、後進のミュージシャンの為にも書いている】
という側面もあります。
僕らがこの音楽性を突き詰めようとした時に「どうやったら海外の○○みたいな音楽になるのか?」とか、「○○の元ネタは何だろう?」とか右も左も分からなかったし、どちらかというとマニアックでちょっと閉鎖的な世界だったので、事細かに教えてくれる先生なんてのもいなかった。
当時はインターネットが今より発達していなかったのでそんなに情報が無かった、というのもありますが。
なので、この火を絶やさぬ為にも、そういった人たちに少しでも何か手掛かりを残せないかな?ヒントになるものを残せないかな?とずっと思ってきました。
その人がここにたどり着くのは今から何年後、何十年後になるかはわかりません。また、この記事がインターネットという世界で果たして残っているのかもわかりません。
でももし、THE CHERRY COKE$の音楽が好きで、調べて、ここにたどり着けることがあるのなら・・・。
(あなたがどんな音楽をしているのかは想像出来ないけれど、きっと色々な楽器が入ったバンドや音楽をやっていると仮定した上でお話しますね!)
伝えたいことが2つあります。
1つ目は
「恐れるな!メリハリを出せ!シーンごとに何が主役かハッキリさせるんだ!パンチを出せ!」
ということです。
中途半端が一番良くない!
曲中の楽器の抜き差しをきちんとすることで歌も引き立つし曲のテーマも明確になるはずです。
2つ目。
(この曲を例に上げると)この手の曲は「アイリッシュ感を出す」ことにこだわりすぎて歌のメロディや歌詞が雑で、せっかく良い雰囲気の曲なのに結果として良くないことが多々あります。
イントロの主役は楽器でも本編の主役は歌詞も含めての「歌」だということ。これはもう絶対なのです。
だから、楽器のメロディなどにこだわるのもいいけど、その何倍も「歌(の歌詞、メロディやリズムなど)」にこだわろうぜ!ということ。
「民俗音楽を取り入れる音楽がなぜこの日本で(極端な話)マイノリティーなのか?」
例えばアメリカのようにカントリー音楽が根付いていないから、とか言われることもあるけど。それももちろんあるでしょう。
でも、
その問いの答えの中の1つとして「その民族音楽色を出すことに精一杯で、1番大切な歌をないがしろにしてきた」からだと思うんです。
あなたがこれを読んでいる時代の日本では、僕らのようなアイリッシュパンクみたいな民族色を取り入れた音楽はどうですか?
今より市民権を得ているだろうか?
なんでもいい。ジプシージャズでもラテンロックでもなんでも。
もしそんなに市民権を得ていないなら、ぜひ君の、君たちの手で世の中をびっくりさせるような音楽を作ってほしい!と切に願います。
馬鹿みたいな事を言っているかもしれないけれど本気で願っています。
2018年の今は日本のリスナーも本当に耳が肥えていて、複雑なものでもなんでもすんなり聞いている時代になりました。
普通に僕らプレイヤーサイドより沢山の音楽を聴いたり知っていたり…なんて珍しくありません。
そんな中、ちょっと変わった音楽性のバンドが生き残るには普通のバンドより人数や楽器が多い分、しっかりとアレンジをして勝負をしないと散らかるだけで終わってしまいます。
こんなこと言えるのも、自分たちが失敗に次ぐ失敗を重ねてきたからで、同じことを味わっては欲しくないからです。
この道は僕らの先輩ミュージシャンたちが切り拓き模索してきた道でもあります。
だから僕たちもそれを受け継いで自分たちで手探りながらも答えを探してきました。
そして今、ようやく出したい音やイメージの答えの導き方が分かってきたところなんです。
ここにたどり着くまで20年近くもかかりましたが・・・。
ロックなドラム、ベース、ギター、ボーカルのサウンドにアコーディオンやホイッスル、ヴァイオリン等のアコースティック楽器を乗せて創造することは簡単なことではないけれど、僕らが歩んできた道のりよりも近道をして進んで欲しい。
日本人の作る音楽で世界をアッと言わせて欲しい。
もしこの連載を読んでもいまいち分からなかったら、「THE ANSWER」を隅までよく聴いてみて感じてほしい。
この6人のメンバーの絡み合う鼓動と共に、きっとそこには何か答えがあると信じています。
これを読んでくれている未来の君が、君たちが、作り出すメチャクチャかっこいいサウンド。
その音に出会える時には僕らはもうこの世に存在しないかもしれません。
だけども、1日でも早くその日が来るのを1音楽ファンとして、純粋に心待ちに楽しみにしています。
受け継がれてきたこのタスキがどうか届きますように。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
来年はいよいよTHE CHERRY COKE$も20年目に突入するよっ!
まだまだ行こうぜ!ドンチャン騒ぎ!!!
2018年12月23日(日)
MASAYA