月別アーカイブ / 2017年04月

早朝に集まりまして、現在、京都まであと数十キロという地点のSAで、この文章を書いております。

こんにちは、LFです。

さて、『THE LIVE』Tour、本日より三日間、京都、滋賀、岐阜と回ります!

4/27(木)京都 LIVE HOUSE GATTACA
w/BUZZ THE BEARS、FIVE NEW OLD

4/28(金)滋賀 U★STON
w/HOT SQUALL、MEANING、SKA FREAKS

4/29(土)柳ヶ瀬ants
w/HOT SQUALL、THE SKIPPERS、FABLED NUMBER

ゲストバンドも素晴らしいメンツが集まってくれました!

是非是非、遊びに来て下さいね!

先ずは本日の京都GATTACA、皆さんとお会い出来る事を楽しみにしております☆

後ほどお会いしましょう!

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(これまでのあらすじ)

ジャズBarで働き始めた俺は一際異彩を放つジョージという男に出会った。週3~4回来店していたジョージだが、ある時を境にパタリと来店しなくなったのである。

「最終話」

翻訳の仕事が激減したというジョージ。それに伴い2日に1回は来店していた彼が突然全く来なくなった。

聞くと、どうやらジョージのツケが100万を大幅に超えたというのだ。

深い仲の常連なんかはツケでよく飲んでいて、貯まったらドバッと一気に支払っていた。しかし、ジョージは仕事も減ってしまった為、返済出来ず店に来れなくなってしまっていたのだ。

なんとも悲しい話だがこればかりは俺にはどうしようもない。

まぁ、このご時世に「ツケ」という「信頼だけで成り立つ」システムがあることに驚きを隠せなかったが...。

しかし、悪運が強いというべきか?

その数カ月後...中国から大量の仕事が舞い込んできたらしいジョージは、ツケの支払いを半分はしてまた店に通うようになった。

だが、その頃くらいからだろうか?ジョージの様子が少しずつ変わってきていたのを感じた。顔色も悪かったり、ね。

働いていたお店は、お客さんを外まで見送るスタイルなんだけれど、ジョージを見送ろうとすると彼の歩き方が少しずつおかしくなっていったのだ。

大袈裟な話ではなく最終的には1秒に10cmくらいしか進めなくなっていた。痛風で痛くて痛くてたまらない、と本人は言っていたが...。

六本木という街は、遊びを知っているサラリーマンや水商売のきらびやかな女性達、外国人の客引き、業界人風な怪しい男たち...etc、様々な人間たちが絶えずうごめいており、欲望が渦巻いていた。

その、人の波の中で尋常ではないくらい遅く歩くジョージ。その違和感は1人1人の人間の生き方の対比に見えて仕方がなかった。

「俺は流されない」

俺には「欲にまみれた人達」にジョージがそう主張しているように見えてしまい、「それもなんだかジョージらしいな...」と勝手に思ったりもした。

ジョージの自宅は六本木のマンションだが、あれではきっと自宅まで2時間はかかるだろう...。

その頃のジョージの口癖はこうだ。

「おいちゃんはな!福岡の男ばい!福岡に身寄りはもういないが、いい歳だしそろそろ故郷に帰ろうと思うけん!」

方言の誤りがあったら申し訳ないが、こんな感じの博多弁?でよく言うようになった。

日に日に歩けないほど身体が痛くなっているのにそれでも酒を飲むことをやめないジョージ。

ジョージが酒を欲しているのか?
酒がジョージを欲しているのか?

ジョージは毎度毎度浴びるように飲んではフラフラで帰る...その繰り返しだ。

まるで何かに取り憑かれたように。

そんな日々を過ごしていたある時。ついに俺がその店を辞めることになった。だが残念なことにジョージとはきちんとお別れは出来ていなかったと思う。

そして、俺がそのBarを辞めてから数年後。その頃お世話になった先輩たちとSNSでやり取りをしていた時のことだった。

「ジョージさんついこの間亡くなったんだよ、知ってる?」

え...
嘘だろ...?
体調良くはなかったけれど...
なんで...!?

人によって、その亡くなった時の話が何故か違う。

「六本木の通りで倒れて亡くなったらしい」

という説と

「自宅で亡くなっていたんだって」

という説。

そのどちらにしても、あまりにも淋しい死に方じゃないか。故郷、福岡で死ぬことをあれほど望んでいたのに...。だがしかし、ジョージらしい最期だったんじゃないか...?不謹慎に思われるかもしれないが俺はそう思ってしまった。

破天荒な生き方をしている人ほどロクな死に方をしていない気がするから...。悲しいけれど...。

阿佐田哲也の「麻雀放浪記」をご存知の方はいるだろうか?

その中の登場人物の出目徳という男が麻雀の対局中に息を引き取るシーンがある。そして、その対戦相手であったドサ健という男は無常にもその死んだ出目徳の身ぐるみを剥ぐのだ。

「この世界では死んだやつは裸になるんだ。死んだら負けなんだ」

とはピカレスクロマン丸出しなドサ健のセリフだが...何故かそのシーンが俺の頭の中に浮かんでしまった。

雑多な六本木の街中で人知れず息を引き取ったジョージ。臨終の間際、意識の狭間で何を考え、何を思っていたのかは誰にも分からない。

でも、きっとジョージには自分の人生に対して後悔なんてこれっぽっちも無かったんじゃないか?幸せな故郷の風景を頭の中に思い描いて死んでいったんじゃないか?と、本当に馬鹿みたいに思うんです。

きっと...ジョージは自分の身体の限界を感じていたんだ。だからあんなに無理にでも飲んでいたんだ。そうだ、そうに決まってる...。

この世の中、一人の人間が「自分以外の人間やモノを数十年も愛し続ける」ことは中々お目にかかれない。

だが、数十年も死ぬまでジャックダニエルという酒を一途に愛し、不器用だが本当は気は優しくて心の綺麗な荒くれ者が俺の人生の中に確かに存在した。

息子のように物凄く可愛がってくれたんだ。生意気な俺にとっても良くしてくれたんだ。

俺、忘れないからね。ありがとう、ジョージ。

どこの店に行っても置いてあるメジャーなバーボンであるジャックダニエル。今でもジャックダニエルのボトルを見かけると、あの酒が俺に語りかけてくる気がするんだ。

「おぉ!スッちゃん!元気にしてるかね?ガーハッハッハッ!!!!男はロックじゃなきゃいかんぞー!ほら!飲め飲め!!!!」と。

あのボトルを見るとジョージが俺の中に息づいているのをリアルに感じることが出来るんだ。

そしてまた、2度と聴くことの出来ない、あのかすれ声のブルージーなGeorgia on my mindが俺の頭の中に流れ始める...。

俺がそっちに行くまではまだ時間があるけれど、もしそっちで再び会えたら...俺に飛びっきりのジャックダニエルのロックをまた作らせてくれないか...?


もちろん俺のおごりさ。






さようなら、ジョージ。






たった一杯の酒にも山の想い出が詰まっている。にとってのジャックダニエルは、そんな1人の漢捧げ鎮魂酒。






さようなら、ジョージ。







(これまでのあらすじ)

六本木のbarで一際異彩を放っている大男のジョージ。そんな彼と知り合った俺はひょんなことから気に入られ、彼のマイボトル「ジャックダニエル」をご馳走されることになる...。


「第2話」

飲みきれないほどのジャックダニエルを俺にご馳走してくれたジョージはとても機嫌が良く、突然「よし、1曲歌うか!」と言い始めた。

説明していなかったが、俺が働いていた店はジャズを始めとした様々なジャンルの音楽を、酒が美味しくなるような生演奏で楽しむ、ということをウリにした、わかり易く云うとジャズbarと呼ばれる店だった。

しかし、ジョージが「歌う」ということは意味がわからなかった。なぜならジョージはお客さんであり、プロのミュージシャンではないからだ。

(おいおい...素人が歌ったりして大丈夫なのか...?)

俺は心配なので、先輩達に「ジョージが歌おうとしてるんですけど良いんですか?」と聞きたかったのだが、店内は慌ただしくそんな時間は無かった。

その日のバンドメンバーにジョージと昔からの知り合いのプロのジャズドラマーが参加していた為、ジョージの参加が暗黙の了解でアッサリと認められていた。

フラフラな足取りでステージへ歩き始めるジョージ。もちろん片手にはジャックダニエルのロック。その様子を見ていたらそりゃあ心配にもなる。しかも、よく見たら首にサックスをぶら下げている。

(あれ?あんなもの持ってきていたのか?)

店内には普通にプロの演奏を聴きに高いお金を払って来ているお客さんが大勢いるわけだから俺は心配で心配でソワソワしてきた。

(あぁ...終わった...ジョージと関係の無いお客さんは怒らないかな...心配だ...っていうかジョージが歌を歌うとか無理でしょ...だいたい何歌うのよ...)

そんな俺の心配をよそにその日のピアニストがイントロを奏で始めた。ロックグラスをテーブルに置き、その手でマイクを持つジョージ。

「Georgia~Georgia~♪」

こっ、これはっ...!!!

ジョージが歌い始めた瞬間、俺の全身の血液に電流が走り、全細胞がブワーっと喜びに震えたのを記憶している。それはあまりにも素晴らしい歌声だったからだ。

Georgia on my mind

それはホーギー・カーマイケル作曲のジャズのスタンダードとなっている有名な曲だ。(どんな曲か知らない方のためにマイケル・ボルトンver.を貼っておきますね。ブルージーな歌が好きな方にオススメです)




「なんだなんだ...!?こんなGeorgia on my mind聴いたことがねぇ!!!!最高の歌声...最高にブルージー...非の打ち所がないじゃないか...ウソだろ...!?」

今までも数々のプロミュージシャン達がその曲を店内で歌ってきていたが、はっきり言ってプロのジャズミュージシャンが歌うその曲より、ジョージの歌う曲の方が100倍良かったのだ...!

なんとも言えないかすれた声、絶妙な間のとり方...どれをとっても痺れるほどカッコいい。アドリブで吹いているであろうサックスのソロも「上手い下手」を超越してとてもクールだった。

(今だから分かるが、生き方や人間性などの全てが音ににじみ出ていたんだと思う。即興演奏メインのジャズの面白いところだ)

「信じられん...あの破天荒な酔っ払いのジョージが...???」

ルイアームストロングのような...と言ったらいいだろうか?とにかく強烈な個性...日本人離れしている...。

そうこうしているうちに曲が終わって店中に拍手が響き渡る。

ふと我に返った俺は戻ってきたジョージに

「ジョージさん凄いですね!めちゃくちゃカッコよかったですよ!」

そう話しかけたと記憶しているが、今思えば非常に乏しい語彙力だなぁと恥ずかしくなる。

「ガーハッハッハッ!!!!そうだろう?そうだろう?どや!おいちゃんカッコええやろ!?ガーハッハッハッ!!!!」

そう調子に乗ってみせるジョージだったが、本当にカッコよかったので仕方ない。完全に降参だ。

そして、カウンターに戻ってきたジョージは俺のグラスを見るや否や

「おっ?スッちゃん!もう酒が減っているじゃないか!おいちゃんの歌で酒が進んだんだろう?ガーハッハッハッ!!!もっと飲め飲め!」

そう、ジョージがいない間に俺のグラスの中の「飲みきれるはずの無い」大量のジャックダニエルは、コッソリとほかの新しいグラスに少しばかり移し替えていた為、俺のいただいたジャックダニエルは減ったように見えていたのだ。

「え?いいんですか?ジョージさんありがとうございます」

(もうこれ以上飲めないし、マジでもう要らないんだけど...新人なのに今潰れたらこの後仕事にならないよ...やばいぞ...飲まなくても失礼だし、飲んでも地獄じゃないか...!)

本音はそれだったがいただくしかなかった。

大体ジョージは週に3~4回はお店に飲みに来る。来た時は毎回そんな感じで、俺は飲みきらないジョージのジャックダニエルと戦っていた。

ふとした時、ジョージの仕事を知ることになったわけだが、どうやらフリーの翻訳家らしい。

こう見えてこのオジサマ、数カ国後できるようだ。(とはいえ、もはや驚かない。あの歌の衝撃に比べれば...ね)

そして、俺がジョージと知り合って数年が経過した頃だろうか?

「スッちゃん!最近は仕事が激減してしまってな!これからはそんなに飲みに来れないかもしれんぞ!」

とジョージが言う。人間的に嫌いなわけではなく、好きなタイプの人間なので淋しいが、荒くれ者がいないとなると店内は平和なので何とも複雑な気分だ。(天敵な常連も多数いた)

「ジョージさん、無理なさらず来れる時にでもフラッといらしてくださいね」

俺からはそんな言葉を本音と建前を半々でかけるくらいしかできなかった。

...そしてある時を境に、パタリとジョージが来なくなったのであった...。


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