18:35
小雨の中
助手席のモモが
不安そうに私に聞いた。
「まま?ままがしんじゃったら
おそらにいくってゆってたよね?」
「そうだね。」
モモは少しだまりこんだあと
窓の外の雨空を見上げた。
「ももかがしんだら、
ももかもおそらにいけるの?」
信号が赤になる。
「うん、そうだよ。」
私は穏やかなトーンでそう答えて、
大好きなモモと
目を合わせて微笑んだ。
「そしたらももか
また ままのとなりにいく。」
まっすぐな、意思の強い声に
なんだか泣きそうになってしまった。
何度生まれ変わっても
ずっとこの子と一緒にいたい。
この子が私のお腹に来てくれて
本当に本当に本当に良かったって
毎日想う。
全てが大好きで、愛しくてたまらない。
仕事中も、早くお迎えに行きたくて仕方がない。
あの子が食べたいと言った料理を、
喜ぶ顔を思い浮かべながら作っているのが楽しい。
出来ることなら、四六時中抱きしめていたい。
朝起きて隣を見ると
ぽてっ!!とした顔でスヤスヤ寝ていたり
先に起きて自分でお着替えをして私をびっくりさせてくれたり
一緒にお買い物に行くと、"いちばんおもたいのはどれなの?"と聞いてきて
自分がそれを持つよ!と言って聞かない、
ほんとうに優しい子。
寝る前にいつもやる合言葉は
"ままと"
"ももかは"
""いつでもいっしょ!""
毎日2人で幸せな気持ちに包まれながら
微笑み合って眠る。
これはもう2年以上、ずっと続いてる。
こんなことを言うと
よく驚かれるんだけど
実は私はこの5年間、
子育てでストレスを感じたことが
一度もない。
抱っこ!と言われて
めんどくさいと思ったことも、一度もない。
夜泣きの最中だったら
この子はこの世の中に産まれたばかりで
言葉も知らなくて
いっぱいこわかったり不安だったり
大人の私がこんな風に大声で泣きたい時と同じくらい
この子も今きっと、必死な気持ちなんだ!って感じる、こっちまで胸がキュッとなる。
ミルクでもおむつでもない時は
大丈夫だよ、ママがおるよ。って
ずーーーーっと抱きしめていた。
私も抱っこしたまま寝ちゃったりして
ハッと目がさめると
モモも安心して眠ってたりして
それを見て
ふふふ!もう大丈夫だからねって
にこにこしながら
可愛くて可愛くて
そのまま抱きしめながら寝た。
どうしても相手出来ないくらい眠い時は
「ごめんママ今めっちゃ眠くておてても限界〜
」って伝えて、

泣いてるモモの隣でぜんぜん罪悪感なく爆睡しちゃう。
変に無理しない。
これは私の子育てのモットーなのかもしれない。
ちょっと相手しなかったぐらい大丈夫。
私の身体から溢れてる愛情の波動みたいなものを、この子はちゃんと感じてくれてる。
私自身がいつも
愛で溢れているために
"私自身"もちゃんと思いやる。
もし私がいっぱいいっぱいになったら
結果的に愛のある振る舞いが出来なくなって
誰もいい気分になんて、ならないんだから。
「このおもちゃ欲しいな〜」って言われたら
「わー!いいなー!ママも欲しい〜!!買って〜!ねぇ買ってよー!」って駄々こねてふざけて、そうしているうちに一緒にばかばかしくなって、2人で爆笑しちゃう
「お金がたまったら買おうか!ママお仕事がんばるよ!助けてねっ♡」
そうやって、楽しく団結しちゃう
もうずいぶん遅い時間なのに
「ねむれないよ〜」って言い出した時は
ねなさい!!じゃなくて
「じゃあママとお話しよっか♡」
「うんっ♡」
私達はそうやって、
いつも楽しく暮らしてきた。
覚えてるんだ。
子供の頃、
時間や規則や体裁ばかりに囚われて
つねにカリカリしてた
かわいそうなお母さんの姿。
お母さんは当時、育児本に"抱き癖がつくから抱っこは×"と書いてあったのを気にして
私が泣いててもすぐには抱っこしなかったらしい。
お風呂の時間
夜ご飯の時間に寝る時間
遅刻に発狂
近所の人や周りから変な目で見られないかばかり気にしたり
ダメといったらダメ
どんなに訴えても子供の言うことは聞くに値しません!といった顔。
私のお母さんはいつも必死で
ほんとうに心配性で、
私のことが大好きで、
つねに色んな不安とたたかっていた。
大好きなお母さんが
近所の人や
テレビや雑誌の受け売りを実践するたびに
私はいつも
「私の声を聴いて」
「私の心を感じて」
って訴えてた。
その言葉すら当時のお母さんには
届かなかったけれど。
子供って
大人になった今よりも
ずっとずっとまっすぐな
強い気持ちを持ってたりする。
小さくたって
一生懸命考えてたりする。
大人が全てわかってるわけじゃない。
子供の方が"ほんとう"を知ってたりする。
頭ごなしに「ダメ!!」とか
「◯◯しなさい!!」なんて言われると
もうどこに気持ちを持っていけばいいのかわからなくて、涙が溢れてくるだろう
すごくすごく悔しくて怒ってるのに
"イヤイヤ期"だなんて一言でまとめられたら
もっともっと悔しくなるだろう
いちばんわかってほしいひとに
なにもわかってもらえない寂しさを
私は知っているの。
大切なあなたに
そんな想いはさせないからねと
今日も静かに、心に誓うの。