むかSIMかし、あるところに、心のやさしい浦SIM太郎という若者がいました。浦SIMさんが秋葉の電気街を通りかかると、キャッチのメイド達が大きな山根博士を捕まえていました。そばによって見てみると、メイドたちがみんなで携帯博士をいじめています。
「お前iPhone持ってないだろ、ゴミみたいなスマホばっか持ってる」
「おやおや、かわいそうに、逃がしておやりよ」
「いやよ。私たちが、やっと捕まえたんだもの。どうしようと、私たちの勝手でしょ」
見ると博士は中華スマホを必死に抱えながら、浦SIMさんを見つめています。浦SIMさんはお金を取り出すと、メイドたちに差し出して言いました。
「それでは、チェキを全オプション付きで買うから、その博士を逃してやっておくれ」
「うん、それならいいわ」
こうして浦SIMさんは、メイドたちから博士を救うと、博士をそっと、香港へ逃がしてやりました。

さて、それから二、三日たったある日の事、浦SIMさんが秋葉のイオシス辺りでSIMフリー端末を探してうろうろしていると、
「・・・浦SIMさん、・・・浦SIMさん」
と、誰かが呼ぶ声がします。
「おや?誰が呼んでいるのだろう?」
「わたしですよ」
すると道端に、ひょっこりと博士が頭を出して言いました。
「このあいだは助けていただいて、ありがとうございました」
「ああ、あの時の博士」
「はい、おかげで命が助かりました。ところで浦SIMさんは、深センへ行った事がありますか?」
「深セン?さあ?深センって、どこにあるんだい?」
「中国です」
「えっ?中国へなんか、行けるのかい?」
「はい。わたしがお連れしましょう。さあ、LCCに乗ってください」
博士は浦SIMさんをLCCに乗せて、深センにたどり着きました。
「着きましたよ。ここが深センです。さあ、こちらへ」
博士に案内されるまま進んでいくと、深センの主人の美しいSIM姫さまが、色とりどりの中華スマホたちと一緒に浦SIMさんを出迎えてくれました。
「ようこそ、浦SIMさん。わたしは、深センの主人のSIM姫です。このあいだは博士を助けてくださって、ありがとうございます。お礼に、深センをご案内します。どうぞ、ゆっくりしていってくださいね」
浦SIMさんは、電脳ビルへ案内されました。浦SIMさんが用意された席に座ると、中華スマホたちが次から次へと素晴らしい端末を運んできます。ふんわりと気持ちのよい着信音が流れて、ファーウェイやシャオミやオッポたちの、それは見事な踊りが続きます。ここはまるで、天国のようです。そして、
「もう一日、いてください。もう一日、いてください」
と、SIM姫さまに言われるまま電脳ビルで過ごすうちに、三年の月日がたってしまいました。
ある時、浦SIMさんは、はっと思い出しました。
(家に置いてきた端末たちは、どうしているだろう?)
そこで浦SIMさんは、SIM姫さまに言いました。
「SIM姫さま、今までありがとうございます。ですが、もうそろそろ秋葉へ帰らせていただきます」
「帰られるのですか?よろしければ、このままここで暮しては」
「いいえ、わたしの帰りを待つ端末もおりますので」
するとSIM姫さまは、さびしそうに言いました。
「・・・そうですか。それはおなごりおしいです。では、おみやげにこのスマホを差し上げましょう」
「スマホ?」
「はい。この中には、浦SIMさんが深センで過ごされた『写真と動画』が入っております。これを電源を入れずに持っている限り、浦SIMさんは幸せに暮らせます。ですがこのスマホはTELEC(技術適合認証)がないものなので、決して電源をいれてSNSでシェアしてはなりませんよ」
「はい、わかりました。ありがとうございます」
SIM姫さまと別れた浦SIMさんは、またLCCに乗って秋葉へ帰りました。

秋葉にもどった浦SIMさんは、まわりを見回してびっくり。
「おや?わずか三年で、ずいぶんと様子が変わったな」
確かにここは浦SIMさんがスマホあさりをしていた場所ですが、何だか様子が違います。浦SIMさんのスマホはどこにも見あたりませんし、売ってるスマホも知らないスマホばかりです。
「わたしのスマホは、どうなったのだろう?・・・あの、すみません。浦SIMのスマホを知りませんか?」
浦SIMさんが一人の元メイドのおばあさんに尋ねてみると、元メイドのおばあさんは少し首をかしげて言いました。
「スマホ?・・・ああ、確かそのスマホなら三十年ほど前の端末ですよ」
「えっ!?」
元メイドのおばあさんの話しを聞いて、浦SIMさんはびっくり。深センの三年は、秋葉の三十年にあたるのでしょうか?
「スマホもタブレットも、みんな無くなってしまったのか・・・」
がっくりと肩を落とした浦SIMさんは、ふと、持っていたスマホを見つめました。
「そう言えば、SIM姫さまは言っていたな。このスマホの電源を入れてると、『写真と動画』が入っていると・・・もしかして電源を入れると、自分のスマホが戻ってくるのでは」
そう思った浦SIMさんは、入れてはいけないと言われていたスマホの電源を入れてしまいました。
「深センから日本に帰国してまだ90日以内。海外機の訪日利用は大丈夫なはずだ」
チャララーラーラー
懐かしの起動音に続いて画面に映像が映し出されました。
「おおっ、これは」
その中には、電脳ビルや美しいSIM姫さまの姿がうつりました。そして楽しかった深センでの三年が、次から次へとうつし出されます。
「ああ、わたしは、深センへ戻ってきたんだ」
浦SIMさんは、喜びました。喜びのあまりSIM姫さまの言いつけを忘れ、あらゆるSNSにその写真と動画を「SIM姫エロ過ぎワロタw」などとコメントを添えてついシェアしてしまいました。
翌日スマホを見てみると七百以上の通知履歴で画面が埋め尽くされていました。
「え、炎上?」
「三十年間失踪してたくせにリア充アピール乙」「浦SIMゲス過ぎ」などのアンチコメントで埋め尽くされ、慌てて投稿を削除するも、魚拓をとられまとめサイトまで出来ている始末。
反省した浦SIMさんは、数年のちその失敗談を元にテレビ番組に出演し人気を博し、幸せに暮らしました。

おしまい。

@hkyamane @AyanoTDO @ACCN

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