月別アーカイブ / 2014年07月

寂しさと恋しさの差を教えてよ 冥王星から着信ですか?

「ねぇあのね、ほんとはわたし、きみのこと」言いかけた、夏、教室、それと

距離をなくそうよ、ねぇ、あの、歩道橋、もう渡れない、終電? おわり

東京のまんなかってどこ? サンダルのベルトが痛い、お願い、待って

空想の世界を泳ぐしろがねの魚のようだと言って、笑って

薄れゆく昭和の影を捕まえて日が暮れるまで缶蹴りをする

浪漫の粉ふりしきる短夜(みじかよ)にご先祖様から手紙が届く

夏に咲く花の名前を探してる 恋をしなけりゃ見えないらしい

朝露を髪に飾った姫様は鬼のお嫁になりましたとさ

涼月(りょうげつ)の夕暮れがほら押し入れのタトウの中に入っていった




※タトウ…たとうがみ。帖紙または畳紙と表記する。着物などを包む紙のこと。

ウェブサイトのリニューアルに伴い、過去の作品を再びブログに戻すことにしました。
口語短歌と文語短歌、どちらもあります。
連作を意識したものもありますが、全体的にフンワリとグループ分けしています。





『 夜半 _ yaha-n 』

ただ花のあえかに咲ける家のあり「浅茅が宿」の妻の家かも

「咳き込むと血が出てしまうの苦しいの。兄様、聞いて──鵺が鳴いてる」

財閥の次男のつきしため息のわけは帝都の月のみぞ知る

母上は天に召されし英雄を寝物語で毎夜死なせり






『 石畳と学び舎 _ ishidatamito-manabiya 』

髪型が崩れてしまいそうだから君の腕からゆっくり逃げる

脱衣所の隅に座ったままでいるボーヴォワールのことを思って

「ふるさとはどこだったっけ、真っ白い犬を飼ってたおうちのとなり?」

雪の降る夜半に君と手をつなぎ互いの距離をさぐる一月

「次はいつ会えるの」なんて聞けなくて梅酒を飲んでごまかす二月

雛壇も婚期もべつに気にしない、ふりして渋谷を歩く三月

衣を縫うごとくに君と手をつなぎ北京小路を歩く七月

君の内側に流れているらしい大河の名付け親になりたい

ひたすらに女らしさを嫌悪する 春の嵐を抱いたまんま

起き抜けに〈男らしさ〉を問うなかれ〈女らしさ〉も分からぬわれに

夏の夜の風が鎖骨を撫でたときふと君に言えそうなさよなら

旧かなで書きし葉書を若き日の曾祖父宛に出したくなりき

ロンドンのホテルで荷物を担ぐベルボーイの耳にダイヤのピアス

いたいけなこぐまの赤いはらわたを喰うしろくまの瞳老いゆく

苦しくて仕方ないから神保町 「安吾」を見つけまた苦しんで






『 蝉と三温糖 _ semito-sanontou 』

いっせいにこうべを垂れて玉音をついに聞きけり女も蝉も

弔いという字はどこかさびしくてお鈴を鳴らす夏の夕暮れ

はつ秋の河川を進む一葉の渡船ありけり水脈を引きつつ

三温糖みたいな夜に沈み込み前へ進めずまた木染月(こぞめづき)

三温糖みたいな夜に沈みこむ気持ちのまんま「君が好きだよ」






『 桜 _ sakura 』

さくらさくらいつかは消える命だわ 花も女もわたしもきみも

さくらさくばかりで何も分かってない わたしの恋は実らなかった

さくらさくばかりでちっとも優しくはないねさよならさようなら

さくらさくばかりだ、わたし、都合のいい女じゃないと言えないでいる

マグダラのマリアみたいな顔してる染井吉野がまた散っていく

桜花 きれいなままで散っていく 家父長制を笑うみたいに

たらちねの母と桜を見ておりぬ 変わらぬものはなにひとつなし






『 春、月夜 _ haru, tsukiyo 』

背中から羽根が出そうな小夜更けぬ ひとりはいやだと思っていれば

世界中どこにもわたしの居場所などないと言ってたよね、さようなら

知らぬ間に肩や背中が厚くなり我がおとうとは男になりぬ

静謐(せいひつ)な夜です呼吸がしやすいです あなたの髪を撫でて微睡む  ※

わたくしを船だとすればわたくしを受けとめられる、港がほしい ※

くだらない男に惚れてた 空き缶を蹴り飛ばしちゃうような男に ※

(※前川裕著『アトロシティー』(光文社刊行)掲載』






『 源氏と平氏 _ genji-to-heishi 』

大鎧(おおよろい)まとうて去りつる資盛(すけもり)に「バカ行かないで」と言えばいいのに

息を止め入水(じゅすい)をしたる維盛(これもり)の手首で揺れる珠の連なり

椿散る京の大路(おおじ)を歩みゆく牛若丸の肌の冷たさ

手紙を書いたりもらったりするのがとても好きなので、
自分の生まれ月の異名が「文月」ということを密かに嬉しく思っています。

文月の十二日は誕生日でした。
当日はたくさんのメッセージを頂き、とっても嬉しかったです。
送っていただきましたプレゼントも全て受け取りました。
皆さまのこまやかなお心遣いに感謝しております。
本当にありがとうございました。

去年の夏から今年の誕生日までの一年は、新たなことに挑戦したり、
思いがけないご縁を得たりと、
「自分に何ができるのか」「『届ける』とはどういうことか」を問い続けた一年でした。
仲間やスタッフ、そして先輩や先達の皆さんに支えられ、
引っ張っていただいての一年だったと思います。
お陰様で、念願だった商業のお仕事をいただく機会も増えて参りました。

これからの一年も、「言葉」を大切にしていきながら、
「書く」という行為に向き合っていきたいと思います。
今後ともよろしくお願いいたします。

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