月別アーカイブ / 2013年03月

 
春に吹く風の名前を探せずに呼吸をしたら、桜、満開


誰ひとりわたしを止めることなんてできはしないと秋の風吹く


結婚はしないしないと言いながらもう五本目のたばこ、吸ってる


ねえ今日の夕陽を見てよ ひとり泣くシャネルの吐息みたいな空を


ああわたし、男だったらよかったよ 吐き出すように笑う七月


春風の吹き荒れる日によく似てるあなたの声がわれを鼓舞する


晩春に通り抜けたる風に似たあなたの声がわれの背を押す


「マヨネーズ嫌いなんだ」と言うときの弟の喉仏おさなし


ヒロイックなんて言葉は死語になり霙(みぞれ)が降り出す東京、渋谷


「取り置いた心はどこにいきますか」躑躅(つつじ)の咲いた、公園で泣く


シンバルをスネアをタムを打ちまくる彼女の音をただ聞いている


ねえ、わたし、海に行きたい水天彷彿をふたりでただ見ていたい
【水天彷彿:すいてんほうふつ…海上遠く、空と水面とがひと続きになっていて境界がはっきりしないこと。】


うそくさい鞄は捨てるうそくさいグロスも君もあの日の夜も


満月が吾(あ)の内側にある水をゆっくりゆっくり揺らしていくの


恋なんて簡単だよと笑む友の髪の毛日に日に傷んでいくが


茜さす君と話をしてみたし『ドラゴンタトゥーの女』のことなど


ただ君がフリーであることまっすぐに信じてみてる二月の夜に

 
既に杏ノ助が撮影レポートを書いてくれているのですが!

> 杏ノ助クラブ:【映画撮影レポ】海軍…別れ…そしてジョジョ立ち】 <
 
19日は、某所で行われた歴史再現映画『孤島の誓い』の撮影に参加してきました。
こちらの記事に書いた、目羅嘉也監督の作品です。

当日は快晴で、裏方として同行してくれた杏ノ助は「杉花粉のバカヤロウコノヤロウ」になっておりましたが、
適度に緊張感の漂う、和やかな現場でした。


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\イエーイ/ ※撮影:目羅監督に頼んじゃいました(^q^)エヘ


今回、私は主人公である海軍技術中尉・功刀博(くぬぎ・ひろし)の妻である功刀靖子(くぬぎ・やすこ)役でした。
二人は幼なじみ。昭和十八年九月に功刀中尉が大学を繰り上げ卒業して、
その翌年に技術中尉に任官する設定なので、どこか初々しさのあるカップルです。

今回は、戦中のシーンと、戦後のシーンの撮影でした。
戦中の靖子は、写真の通りのモンペ姿。
人生初のモンペです!(一回は着てみたかった|ω゜)!)
そして、功刀技術中尉は海軍さんの制服です。
この制服もきちんとした考証がなされており、着方から所作まで、
監督を始めとしたスタッフの方々のご指導が入りました。

功刀技術中尉役は、俳優、河合朗弘さん。
舞台やドラマ、映画など、多方面でご活躍中です。
「穏やかで頭の回転が早く、困難をどうにかして切り抜けていこうとする」という、
功刀技術中尉の役柄にぴったりの、とても素敵な俳優さんでした。
現場では細やかにリードして下さり、大変勉強になりました。



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\ぴーす/



私は、学生時代に近代文学を専攻していたこともあり、
映画の舞台となった第二次世界大戦で起こった様々なことを、
本で読んだり、映像で観たり……実際に体験した方々から、当時のお話を伺ったりしてきました。
そして、自分なりに当時の人々の心情に思いを馳せてきましたが、
今回、お芝居を通して、微力ながら当時の人々の気持ちに寄り添ったら、
本当に、当時の方は辛い辛い思いをされたのだなぁと、胸が詰まりました。
もう二度と会えないかもしれない大好きな人を笑顔で見送らなきゃいけないなんて、
辛過ぎると、心から思いました。
でも、結局は、そうしなければいけなかった。
自分だけでなく、見送られる側の相手だって辛いし、寂しいし、苦しいのだと感じました。
だから、せめて見送る時は笑顔でお見送りしようと思えたのかな、と、思います。
もちろん、人によって感情は違ったと思いますが、
こんな風に思ってた人達も多かったのではないでしょうか。
この、「分断される痛みを堪えることを強いられる感覚」は、
3.11で被災された方々との問題にも繋がるような思いがしました。
奇しくも、撮影日はお彼岸でございました。


戦後のシーンでは、功刀技術中尉の部下であり、中尉を強くサポートする山上二等兵曹役の麓知彦さんとの共演でした。
とある決意を胸に、功刀家を訪れる山上さんのシーンです。
麓さんも、真摯にサポートして下さり、重厚な場面をやり終えることができました。
普段はとても明るくて気さくな方です。あと、運転がお上手です(キリッ)


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『孤島の誓い』は、秋頃に完成の予定だそうです。
公開情報ナドナド、分かり次第追ってアップしますね!
私も今から楽しみです!



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\モニターチェック中/


どうぞお楽しみに!
目羅監督、お体大切になさってください!
ありがとうございました!

8

既にTwitterとFacebookでは告知させて頂いたのですが、
綾部の短歌3首が『第15回日本ミステリー文学大賞新人賞』を受賞された前川裕先生の新作『アトロシティー』に掲載されました。
拙作は、歌人である『辻冬子』という女性が詠んだもの、ということになっています。
そうなのです!『アトロシティー』には、綾部ふゆをモデルにした登場人物が登場します、が……
もちろん、作中で起こる事件や、彼女の言動は、実際とは一致しません。

著者である前川裕先生は、現在も法政大学国際文化学部の教授として比較文学・アメリカ文学を教えていらっしゃるのですが、『日本ミステリー文学大賞新人賞』受賞作である『クリーピー』は、『このミステリがすごい!』の2012年度新人賞ベストテンで堂々の1位に選ばれ、その時も、作中の女子大生の台詞などについて、僭越ながら綾部がお手伝いなどをさせて頂いた経緯があります。
今回は、作品に合わせて歌を詠ませて頂いたわけではなく、前川先生が拙作を読んで下さり短歌掲載の運びとなりました。

前川先生は、実際に杏ノ助のライブにも何度も足を運んで下さっており、その時のご経験などが『アトロシティー』の中で、虚実の合間に立ち上る煙のように揺らいでいるように感じられます。



『アトロシティー』は、ジャーナリストであり大学の非常勤講師でもある『田島』という男性の視点で進んでいくクライム・サスペンスです。
全てのはじまりは、田島が雑誌の編集長に頼まれて「孤独死」という観点から、とある母娘の餓死事件を調べ始めたことでした。
田島の年齢は50代半ば。6年前に妻と離婚し、娘は妻と共に暮らしているために、一人暮らしをしています。
そんな田島の隣室に越してきた、一風変わった二人──それが、『竜之介』と『冬子』でした。
竜之介は、アニソンや戦時歌謡などを歌いこなす屈託のない人物として描かれ、田島を驚かせます。
一方、冬子は、どこか影のある用心深い女性として描かれており、物語は、この二人の元に訪問販売と称してやってきた二名の男性の登場で更なる動きを見せます。
脅迫めいたことをし始める二人組を追い出す術が分からず、竜之介と冬子は隣室の田島に助けを求め、田島もそれに応じます。
一悶着あったものの結果として事なきを得た田島は、そこで不可思議な再会を果たします。
その相手は、竜之介のライブに来ていた変わった風貌の男でした。
そして田島は、彼が警視庁捜査一課の刑事であることを知るのです。


『チャーリー、私はあなたではないのよ。誰も殺すことなんかできない。』


この台詞は、1969年にアメリカのカリフォルニアで実際に起こった殺人事件(チャールズ・マンソン事件)の犯人グループの一人である、リンダ・カサビアンのものです。
彼女は、加害者の中で人一倍贖罪の意識が強く、裁判の時には検察側に立って証言しました。

単なる悪質な訪問販売の事件かと思えば、60年代の陰惨な事件とリンクするような昏い(くらい)出来事が息を潜めており、あちらの事件とこちらの事件とが次第に繋がっていきます。
田島は、気付けばひとつひとつの事件の糸と糸を繋ぎ合わせる立場にいました。


「こいつ貧乏だぜ。許せない。殺しちゃおうか」


来客を告げる軽快なチャイムの音。
常であればそれは明るいものであるはずなのに、この物語の中では、その音は昏く、そして重苦しいものがやって来ることを告げています。

田島の孤独、竜之介の空虚感、冬子の苦悩。
冬子は自分のブログに、ひっそりと、息を殺すようにして以下の歌を載せていました。


 静謐(せいひつ)な夜です呼吸がしやすいです あなたの髪を撫でて微睡む
 わたくしを船だとすればわたくしを受けとめられる、港がほしい


編集長の葛藤、田島の親友である勝呂(すぐろ)が取り落としたもの、
犯罪者たちの懊悩と高揚感、そして、沸騰するように顔を見せる後悔と狂気。

夜の繁華街を長時間歩いた時に感じる、不安感や疲労感を凝縮させたような読後感だと思いました。


『ドアチャイムが鳴った。
 あなたの部屋には、親しげな顔をした、
 悪魔が立っている。』


これは、本の帯に書いてあるコピーですが、まさにその通りの作品でした。
誰が住んでいるのかも分からないマンションやアパート、一軒家。
その中で何が繰り広げられているのか私たちには分かりませんし、誰も知ろうとなんかしません。
それと同様に、今この瞬間に傍らに立っている近しい者の心の中を覗き見ることなんて不可能である。そんなことを見せつけられます。

ましてや、心の闇を見透かすなんて、そんなこと。


『傑作犯罪叙事詩』。
是非、お手に取ってご覧下さい。



▼ 前川裕『アトロシティー』(光文社)
http://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334928735


併せて、前川先生のデビュー作もどうぞ!

▼前川裕『クリーピー』(光文社)
http://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334767082



そして最後に。
私は佐々木くんに萌えました。
ちょっとうっかり系な武闘派男子佐々木君。佐々木君いいよ可愛いよ佐々木君。


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Image Photo by : MIZUTAMA

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