長野県上田市に『無言館』という美術館があります。
第二次世界大戦で戦没した画学生の慰霊のために設立された所で、私は一昨年の夏に、一度だけそこを訪れたことがあります。

緑の多い坂道を上がっていくと展示館が二軒建っており、中へ入ると、戦場で散った年若い画学生たちの絵画をはじめとした作品や愛用品、家族に宛てた手紙などが数多く展示されていました。
ドーム状の天井一面に貼られた画学生たちの絵を見上げて、声を上げる人はほとんどいません。
それは私も同じで、汗を拭くために持っていたハンドタオルを握り締めたまま、身を硬くしてそれらを見つめることが精一杯でした。
私はあの場に適した言葉を、今でもまだ探し切れていません。

それから数年後、偶然読んだ短歌関連の書籍に『無言館』を詠んだ歌が掲載されていました。
それ故でしょうか、今年の暑い夏の午後に、不意に『無言館』の歌が次々に降ってきて、慌てて近くにあった紙切れに走り書きをしました。
私自身が感じたことを詠んだもの、画学生たちはこう考えていたかもしれないと思い、彼らの言葉として詠んだものが混在しています。
まだまだ形になっていないものも多くありますが、ひとまず十首です。
機会があれば、皆さんも『無言館』に行ってみてください。


>> 上田市役所 - 信州上田観光情報 無言館 <<






無言館 えがき残せしイメージがただ整然とそこにあるだけ

いくたりの人の涙を吸ひ込みて真白く光りたりや、カンバス

母さんの写真と絵筆は捨てられず 万歳、そして、散りにけるかも

妹に宛てて書きたる絵はがきのインクのかすれさえもやさしき

行軍のさなかは絵のこと芸術のことを念じる余裕もなくて

もう明日の今ごろ僕は死んでいるかもしれないよ、絵が描きたいよ

欧州の名だたる名画を見まほしと思ひつつ寝る、夜が更けゆく

ズッという音と一緒に斃れゆく友の姿はイーゼルに似て

もし生きて還れたならば何を描く? 数多の死者の思いを背負って

恐らくは笑みやはらかき人だらう 清き手紙を読みて思ひき





ご無沙汰しておりました、綾部でございます。
最近、一日があっと言う間です。
気付けば九月下旬ですねえ。
夏の間は少しの間田舎(というほどでもないけれども)におりまして、
そこでだいぶぼんやりぼんやりしていたような気がします。

さて、そんな綾部ですが、秋以降のお知らせが目白押しでして、
ここでまとめてお知らせさせていただこうと思います。

まずは、連載のお知らせです。
9月29日発売の『ボカロPlus vol.7(徳間書店)』に「こしかた萌え草子」というタイトルのエッセイを連載させていただいております。
こちらは今回で2回目。
日本の文学作品(古典)の中にちりばめられている「萌え」を引き出してご紹介するものです。
初回は『源氏物語』に登場する地味っこヒロインの夕顔ちゃんをご紹介いたしました。
で、今回は『平家物語』の中から、木曾義仲と今井四郎兼平をご紹介します。

こちらは、編集のお手伝いもさせていただいております。
前号よりも更に若手のクリエイターさんたちを掘り下げた内容になっていると思います。
是非お手に取ってご覧ください。

ボカロPlus [大型本]






次は、CDに関するお知らせです。
11月21日に発売されます、杵家七三社中の皆様によるボカロ曲の全曲和楽器演奏アレンジCD、『和楽花道中(わがくはなどうちゅう)(avex)』に収録されます『いろは唄』と『紅一葉』の歌詞の文語訳を担当させていただきました。
歌唱は、もちろん佳館杏ノ助でございます。
CD音源は全9曲、DVD映像は全4曲の予定で、その内、文語調の歌詞アレンジの曲は、
『和楽・千本櫻』と『いろは唄』、『紅一葉』の3曲のみになります。

歌唱は、杏ノ助の他には『和楽・百年夜行』を鈴華ゆう子さん、『和楽・ダンシング☆サムライ』をぽこたさん、『和楽・般若心経ポップ』を蝉丸Pさんが担当されます。

現在、ニコニコ動画に『PVのPV』がアップされておりますので(笑)
どうぞご覧くださいませー!市場がカツラばっかりww





『和楽花道中〜杵家七三社中傑作選 ボカロ曲を演奏して頂いた〜(HQCD+Blu-ray Disc)』






その他、怪談方面に関するお知らせなどもあるのですが、こちらはまだ詳細が出ておりませんので、詳細が分かりましたらお知らせさせていただきます。

 
気付けばもう六月も中旬……!
と、言うことで、順にブログを更新していきます。
先月は、平家琵琶の演奏家・鈴木まどかさん(前田流平家詞曲相伝)主催の演奏会にお邪魔してきました。

あれ?ふゆちん、前も「琵琶」って言ってなかったっけ?
しかも、その時は「薩摩」って言ってなかったっけ?
と、思われたそこのアナタ!鋭い!
そうなんです。「琵琶」という楽器にも、実は幾つか種類があるのですね。
現在、大河ドラマ「清盛」で、時折「ッベベーン!」とか、「……ジャカジャーン……」と、
激しくかき鳴らされているのは「薩摩琵琶」というタイプの琵琶です。

一方、今回ご紹介する「平家琵琶」は、余り音色を聴く機会がありませんね。
現在は、大河ドラマのタイアップとして、全国の博物館で『平家物語』や平氏にまつわる企画を行っており、その際に、平家琵琶の演奏会が行われることが多いようです。
実際に、鈴木さんも、それらの演奏会で演奏されています。

平家琵琶は、鎌倉時代初期に成立したと言われている楽器で、
それよりももっと古い時代に成立していた「楽琵琶(雅楽を奏でる際に使用する琵琶)」と同じ構造をしているものだそうです。
薩摩琵琶に比べて、平家琵琶の音は本当にシンプル。
波がざざーっと広がるような、力強い余韻を持っているのが薩摩琵琶だとしたら、
湖面に美しい波紋が広がるような余韻を持っているのが、平家琵琶だと思います。

先程「ドラマの効果音に~」と書きましたが、薩摩琵琶も平家琵琶も、本来は琵琶を弾きながら演奏者が物語を語るということはご存知でしたか?
平家琵琶は、「平家」と名前がつくことからも分かるように、『平家物語』を語るための琵琶とされています。
この伝承文化のことを「平家詞曲(へいけしきょく)」または「平曲(へいきょく)」などと呼ぶそうです。

琵琶の歴史や構造、音色、平曲についてのことは、
鈴木まどかさん主催の「平曲研究所」が非常に詳しいです。
このブログを書くに辺り、参考にさせて頂きました。
ご興味を持たれましたらぜひぜひ!

>> 平家詞曲研究室 <<






演奏会では、今回語られる『平家物語』の段(句と言うべきでしょうか)を、
プロジェクターを用いて分かりやすく解説して下さる時間から始まり、
解説が一段落ついたところで、静かに語りに入っていきます。

今回は、以仁王の挙兵後の様子を描いた「宇治川の戦い」とも呼ばれる「橋合戦」や、平氏の軍勢が水鳥の羽音に怖がって逃げ出してしまったというエピソードで有名な「富士川」などを演奏されました。

静かに、まさに粛々と語られる内容は、激しい合戦の場面であったり、月夜の美しい晩のことであったり、切羽詰まった武将同士の駆け引きであったりするのですが、語り手は過度な感情移入をしません。
淡々とその時の事を伝えていく語りは、私にはとても清らかなものに聴こえ、自分用のメモにガリガリと書き込みつつも、平曲がもたらす時間や空間を掌握する力を感じていました。

当時の風俗や登場人物の関係性も知ることができて、とても濃密な時間を過ごすことができました。


最後に、演奏家の鈴木さんと、鈴木さんのパートナー、
平家琵琶の白鷺さんのお写真を掲載します。
鈴木さん、掲載にあたって、ご快諾ありがとうございました!


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鈴木さんの演奏会情報などが掲載されているブログにも是非足をお運びくださいませ~。
>> 平曲研究所 <<

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