「お母さん、どうしてあのボーカルのお姉さんは泣いちゃったのかな」

若者が集うアットホームなライブハウスで、10代前半だった私は、隣にいた母親にそう問いかけた。
その日、杏ノ助を応援するために足を踏み入れた対バン形式のライブで、一人の女性が『Bohemian Rhapsody』を歌ったのだ。
当時、習い事で英会話をしていたものの歌詞の内容をつぶさに理解することはできず、
何より、明るくはつらつとした表情で他の曲を歌っていたその女性が、
この曲が始まってからほどなくして大きな瞳から大粒の涙をこぼし、
『Mama, just killed a man, 』と歌ったことが、幼い私にはただただ不思議だった。

あのお姉さんは、どうして泣いてしまったんだろう?

すると、尋ねた私に向かって母親は微笑ましそうな顔で、
「きっと、感情が入り過ぎちゃったんだね」と言った。
同時に私は、あの曲が「人を殺めてしまった少年についての曲」だということを知った。

映画を観たり、本や、漫画を読んだりした時に泣いてしまうような感覚なんだろうか。
そんなふうに、なんとなく納得して、私の、その曲に対しての思考は止まったままだった。
『Bohemian Rhapsody』は私にとって、全くの「他人の歌」だった。

――映画を観終わって、余韻に包まれたまま席を立つ。

孤独を飼いならせず、自身や、他者の変化や成長にも上手に向き合えず、
出自や、セクシュアリティや過敏な感性に苛まれて、
「自分」という現実から目を背け続けていた、ラミ・マレック演じるフレディの、
「断絶」という文字が刻まれたような瞳を思い出す。

彼の生きた時代も、今この時代も、常に不穏で、淀んでいて、薄暗い。
でも、その中に明るく光るものもあって、私達はどうにか、そこを頼りに進むけれど、
次第にわかってくることがある。
どのようなものにも、必ず限りがあるということ。
孤独は視野を狭めるということ。
愛したいと思った人に愛されるわけではないということ。
みんなどこかで、何をしても満たされない空虚感や焦燥感を抱えているということ。

フレディが身を削り、心を削りながら作った歌詞と曲が「最愛の」友人や、
メンバーとの関係によって完成されていき、
それが人々の耳に届き、心に達していく流れは圧巻で、
だからこそ、彼の歌った歌詞が、深く深く、胸に刺さった。

ずっと分からなかった。
長じてから、何度も『Bohemian Rhapsody』を聴いて、歌詞を読んできたけれど、
どうしてもあの曲は私にとって「他人の歌」だった。
そうした聴き方や、作品の愛し方もあるのだろうし、良い悪いの問題ではないと思う。
でも私は、この曲を深く知る何かを、どこかでずっと探していた。

けれど、あの映画を観た今なら、自分なりに解釈できる。

「あの少年はフレディ自身で、少年が殺めてしまった人もまた、フレディ自身ではないか」

正解はない。きっと、永遠に知ることはない。
けれど、今ようやく、あの曲が「自分の歌」になった気がしている。




この度、シナリオライターとしての筆名を変更することに致しました。
新たな筆名は、

出雲 ゆき弥 (Izumo Yukiya)

となります。

音楽活動においては変わらず『 芙雪(Fuyu)』ですので、
どうぞお好きなようにお呼びくださいませ🌸

また、出雲個人のサイトを夏頃から開いております。

『うたつばめ』

個人での経歴のほか、短歌や、ちょっとした文章等を載せております。
シナリオ・作詞等のお仕事は随時受け付けておりますので、
お問い合わせの際は、併せてサイトをご覧いただけますと幸甚です。


今後とも、何卒よろしくお願いいたします。


連日の雨が上がり、東京は久し振りに太陽が顔を見せてくれました。
湿度も良い感じに低くて、過ごしやすかったですね。

ブログの更新にまで手が回らず、日々あたふたとしておりますが、
どうにかこうにか、空を見上げる余裕が出てきました。
先日は中秋の名月でしたが、その日はバリバリと執筆しており、
手を止めて窓から空を見上げた程度でした。
余裕がなくなると季節の行事も飛び越してしまいがちですが、
そうした日々もまた、振り返った時に大切に思えることもあるかもしれません。


そんなこんなで、あと数日で九月が終わってしまう……わけ……なのですが!
九月上旬は萬月邸として『第五十五回政宗公まつり』にてライブをさせて頂くという、
大変光栄な機会に恵まれました。
当日お越しくださった方々、お声をかけて下さったり、
ネット上から応援してくださった皆さまに、改めて御礼申し上げます。

政宗公が多感な時期を過ごした宮城県大崎市岩出山。
緑ゆたかで穏やかな町でした。

当日まで&当日はTwitterで状況をツイートしていましたので、
こちらでもご紹介( ˘ω˘)✨




『闢蓮抄』をリリースする際に「政宗様所縁の地でライブをする!」という目標を立てたのですが、
ひょんなことからご縁が生まれ、目標が叶って本当に嬉しかったです。
岩出山の皆様、大変お世話になりました!

そして、帰宅してから休む間もなくシナリオのお仕事をだだだだっとさせていただきまして、
それは現在も継続中でして、うおーー燃えるぜーーー!という感じなのですが、
「歴史上の人物をテーマにしたアルバム第二弾」も、着々と制作が進んでおりますよ!
先日のツイキャス(毎月17日にやってます)でもちょっとご報告したのですが、
「黒田官兵衛&竹中半兵衛」モチーフ曲が届きまして……届きまして!
いよいよ作詞の作業に入ろうとしているところでございます……!わーー!!!

早く皆さまにご報告したい!という気持ちもあるのですが、
まずは気合を入れて、心の兜の緒を締めて、ことばと向き合っていこうと思います。

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