3日目、この日はもう最終日。
キョンキョンが調べておいてくれた、評判のお店に朝ご飯を食べに行こうということになる。
そこは、電車で30分ほどのギルフォードという街にあるカフェだったのだけど、電車に乗って朝ご飯を食べに行こうとするという行動力が出てしまうことが、旅のいいところだなと思う。
基本的には極度のめんどくさがり屋なのがそもそもの性格なのだけど、旅は、自分の中の明るくて前向きで、外の世界に対しての肯定的な興味という私の心の良いの部分を引き出してくれる。
ギルフォードの駅前の通りには、それぞれの店主の個性あふれる趣のある雑貨屋さんやアンティークショップが立ち並んでいた。バリのお土産屋さんに必ずあるようなネコやアヒルの木製の置物や、よくみかける家具もたくさんあった。
バリの外国人観光客で一番多いのが、オーストラリア人。
オーストラリア人にとって、バリへ旅行するほうが自国で過ごすより安いということもあるのか、それともバリがただただ魅力的な島だからなのか、理由はたくさんあると思うのだけど、2週間も3週間も休暇でバリ島を訪れているというオーストラリア人にこれまで何人も会った。
なので、こうしてバリのものがオーストラリアの街角に並んでいても不思議はないのだけど、全く同じものが、雰囲気ある通りの立派な構えの店に並んでいるだけで全く価値が違うように見えてしまうのが不思議だ。
私たちの目指すカフェは、そうした雑貨屋さんに溶け込むようにして、昔から長く愛されているような、大きな主張はないけどかわいくておしゃれな店だった。
休みの日は、家族以外の人と外で朝食を食べる人が多いのか、友人同士らしいグループでお店は賑わっていた。
洋風で、日本人からすると少し調理の際の油が多いかなという朝食は、特別に美味しいわけではないのだけど、それでもこんな素敵な場所で誰かが朝食を作ってくれることが嬉しくないわけがない。
そこでゆったりとした朝食を終えたら、子どもたちが楽しみにしていた動物園へ移動。
ここは、コアラと並んで写真が撮れたり、カンガルーと一緒に走り回れたりすると聞いてやってきた。
オーストラリアの魅力のひとつは、やっぱりほかの地域では見られない動物や植物だと思う。
私は動物が得意なほうではないんだけど、ちはやが動物好きだったこともあって、小動物や犬に触れ合う機会ができてずいぶん慣れてきた。
コアラを間近で見ることができて、しかも撫でることができるなんて、40歳にして生まれて初めての経験。それだけで来た甲斐あったと思う。
近くでみたコアラはスティッチにそっくりだった。
スティッチってコアラだったんだっけ?
近くでみたコアラはスティッチにそっくりだった。
スティッチってコアラだったんだっけ?
子供たちは、お母さんカンガルーのお腹の袋の中で動き回る赤ちゃんカンガルーに夢中でずっと観察していた。ついぞ、その赤ちゃんは顔を出してくれなかったけれども。
それほど大きくはない動物園をひととおり歩いたら、
もう空港へ移動しなくてはいけない時間。
いつもそうだけど、旅行の時に流れる時間の速さはこの世の物とは思えないほど早い。
そうして早く流れる時間の中で、パースでは、お店でも電車でも道路でも、「われ先に」という行動に出る人にはついぞ出会わなかった。
もしかすると、たった2泊3日の旅行だったからかもしれないけれど……。
この街の人々が本当の意味で満たされている証拠だと思った。
旅行の少し前に、センターラインからはみ出して運転してくる対向車に怖い思いをし、バリの運転事情に少しうんざりしていた私はとっても癒された。
バリ島でもまた、他の人がどんな運転をしようとも、自分は余裕と思いやりを持って運転していけそうだと思った。
パースに住んでみたい、と思ったわけではないけれど、できれば何度でもまた訪れたいと思う街だった。
こんな美しく伸びやかな街があるということを知ることができただけで、少し人生が豊かになったと思える素敵な旅だった。