亡くなった金正男さんは外交や情報的には「終わった男」であって、特にこれと言った価値もないとされていた、ただし優秀で洗練された人物ということでした。それが、突然クアラルンプールで女性スパイ二人に殺害されるという事態になって、改めて北朝鮮の異常性や、目的の読めなさみたいなものを周辺に振りまいているんですよね。

 その意味では、ミサイル発射実験よりも金正男さんが殺されたことへの衝撃は大きいと思います。

 何より、現在もまことしやかに流れていますが、金正男さんの後ろ盾が中国で、現独裁者の金正恩さんの体制に介入して打倒後、正男さんを支配者に立てるつもりがあったのではないか、という風聞があります。もちろん、事実関係はそのような後ろ盾による保護などなかったからこそ、正男さんの行動が割れ、空港という公共の場で殺されてしまったことになるわけですが。「なぜ、いま正男さんを殺すのか」を考える上では、ひとつの筋道ではありますね。

 同様に、亡命でこそないとしても何らかのカバーを正男さんにしていたのであればマレーシア当局も信頼が失墜しかねない話ですから、これから、一生懸命どうにかするのでしょう。正男さんを暗殺したとされる女性スパイ2名もすでに死亡しているという情報が出ているようで、これはもう、政治宣伝の世界でしょう。

 北朝鮮、金正恩さんの異常性という点では、単純に親族殺し、後継者争い含みの疑心暗鬼という動機だけでなく、執行するにあたって自殺や事故を装うことさえもしなかったという点にあります。これをメッセージとしてどう読み取るかは人それぞれですが、何か切羽詰まった事情で止むに止まれず強行したか、何らか別の効果を狙ったか、期限を切られた担当者に与えられたオプションが他になかったか、その辺なのでしょう。いずれにせよ、ほとんど人畜無害のように諸外国からは見えていた金正男さんの殺害を実行しなければならない理由があり、必要だから行ったとするならば、私たちに見えていない現実を北朝鮮の若き独裁者は見て感じている、ということになるのかもしれません。

 単純に裏もなく疑心暗鬼や得も知れぬ恐怖に駆られての話か、組織的な都合で過去に繰り返し拉致や殺害に失敗して、内部で追い詰められての強行の話か、どういうストーリーであったとしても、為政者としても組織としてもバッドエンドに進むムーブじゃないのかなあと感じます。

 そのような中で、金正男さんが亡くなったことについては心よりお悔やみ申し上げます。

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