常は不信心の者でも何か困難の際には仏の足元に平伏して助けを求める事を言う。

昨年夏に奈良の長谷寺に参拝した際、中の仏様を拝観したことを思い出す。小さいお堂の中を潜ると、巨大な仏様の足元に到達する。初老過ぎとみえる女性が正に仏様に平伏して懇願する姿を見つけた。その姿が僕の脳裏に焼きついていて、今でも鮮明に再現される。昔も今も変わらず、人の力ではどうにもならぬ事は、もう仏様に縋るしかない時があるのだろう。目には見えずとも、人の念や思いには強大な仏や寺を作り上げる力がある。これに畏怖の念を感ぜずにはいられなかった。
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話が逸れたが、足元といえば、能楽師にとっても重要なものである。我々の世界では白足袋を履くことが原則とされている。この白足袋はぴったりと合う寸法のものが市販であれば万歳である。が、人の足の寸法はその性格と同じだけ存在するため、見つけることは難しい。足元を見られるとはよく言うたもので、神様人様の前で皺のある足元は宜しくない。素足であるが如くぴたりと合うた足袋が理想的である。最近、足の形が微妙に変わった為、誂え直した。誂え、是非お勧めでござる。

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白黒は良い。映し出された対象物や風景の濃淡と輪郭がより浮き彫りになる。先に色の情報が目に飛び込まないため、写真に写る物の鮮やかさや力強さといったものを読み取りやすい。上は桜の写真だが、桜が美しいのは色が理由だけではないはずである。例えば、梅には見られない豪快で華やかな咲き方が、彼らの持ち味なのではないか。

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本日は3月3日、五節句のひとつ上巳の節句の日である。通称お雛祭りの日、桃の花が咲き始めるから桃の節句など呼ばれている。私は男兄弟で育ったので"お雛さん"というのは縁遠いが、住込んでいた先生の家では見事なお人形が飾られていたので雛人形は知っている。男雛と女雛の作りの素晴らしさに感心し舐め回すように拝見していたことを思い出す。
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今年は可愛いお飾りを玄関と1階の床の間に置いた。昨晩に家内から"明日はお雛さんだね"と言われ、あっと気付かされた。この年は既に弥生月を数える。多忙に追われ新年の抱負を抱いた正月の事が遠い昔になってしまった。五節句は中国の陰陽五行説に基づいて、天皇が節会(せちえ)というお食事会を開いた日を元に定められたという。鶴亀の謡にある"四季の節会の事始め〜"である。能のお稽古に通うた事のある人はすぐ其れだと判る。季節の節目に人々の無病息災や豊作、子孫繁栄などをお祈りしたようだ。そういえば節分という四季の変わり目もある。古人たちは現代人のような鈍感さは少なく、毎日を1日1日と考えて生きていたに違いない。
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平安時代にはお雛人形に汚れをうつして川に流す、流し雛という行事があり、現在でも地域によっては残っているらしい。これはインターネットの情報だ。写真の私の家にある雛人形は汚れを移さないように毎年飾るつもりだ。忘却のなか年を忘れないようにするお道具となるだけでも相当の価値があると考えている。何より小さくて愛らしく其れだけで良い。
ちなみに五人囃子は、左から太鼓、大鼓、小鼓、笛、謡手、と能楽を知っていると並べる事は容易い。それぞれ太鼓から謡手へと、音を出す位置が口に近い順に並べられている。これは豆知識である。謡手というのは、我々のような主役を演じるシテ方の事。
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これは蠟梅、先日は桃の花を能楽堂で見た。私は西王母の3000年に一度の桃の実も触れた。今日は早くも一条戻り橋にて桜の初咲きを発見し、光陰矢の如しをひしひしと感じている。御所の桃林と梅林の様子が気になる。二月はあまり行けず。

以下は宣伝である。能よりまなぶ、は第1回目の自主企画の講演である。能楽講座とお堅い雰囲気であるが、中身は全く柔らかいものにしたいと考えている。ワークショップのような体験やパフォーマンスはないが、「熊野(ゆや)」という物語を一つ聞いてお帰りあそばされるだけでも価値が有ると考えている。ご興味のある方は是非ご予約を宜しくお願い致しまする。
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三月の主な出演情報です


●平成29年3月5日(日)
さわってみよう能
能「田村」前シテ
於:金剛能楽堂(京都)

●平成29年3月18日(土) 
東京金剛会 金剛の能
能「高野物狂」後見 
他仕舞地謡
於:国立能楽堂(東京)

●平成29年3月26日(日) 
金剛定期能
於:金剛能楽堂(京都)
能「芦刈」地謡
能「雲林院」後見

●平成29年4月2日(日) 
第六回 龍門之会
能「海人-懐中之舞-」地謡
於:金剛能楽堂(京都)

●平成29年4月7日(金) 
橿原神宮 奉納
仕舞「淡路」シテ
仕舞「土蜘蛛」頼光
於:橿原神宮 (奈良)

●平成29年4月8日(土) 
能よりまなぶ 第1回〈熊野〉
能楽講座 講師
於:龍宝館 菓仙堂(京都)

●平成29年4月9日(日) 
今井後援会
仕舞「歌占クセ」地謡
於:国立能楽堂(東京)

●平成29年4月10日(月) 
三輪大社 奉納
能「三輪」地謡
於:大神神社(奈良)

●平成29年4月11日(火) 
椿大社 奉納
能「鈿女」後見
於:椿大神社(三重)

●平成29年4月15日(土) 
金剛流横浜能の会
能「巻絹」ツレ
於:横浜能楽堂(横浜)

●平成29年4月16日(日) 
純星会 春の会 (無料)
仕舞、各種地謡
於:矢来能楽堂(東京)

●平成29年4月23日(日) 
金剛定期能
於:金剛能楽堂(京都)

●平成29年4月25日(火) 
京都能楽養成会
仕舞「春日龍神」シテ
舞囃子「葛城」地謡
於:観世会館(京都)

●平成29年6月11日(日) 
山田伊純独立記念能
能「乱」披き
於:国立能楽堂(東京)

チケットの御用命は
山田伊純事務局
「お問い合わせ」迄
お願い致します

【宣伝】7/21 18:30-20:00 観世流能楽師の林宗一郎さんが講師を勤められます弘道館さん主催の「能あそび」にゲストとして出演させていただくことになりました。
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「能あそび」では"能の世界を様々な角度からあそぶ"ことが目的の催しで、私もフェイスブック等で目にしたことのある企画でした。今回は各回ごとに1人ずつ能楽のシテ方(主役を務める流儀)五流の演者をゲストとしてお呼びしているとのことです。
能楽通の方々や関係者にとりましては中々面白い企画であることは明白ですが、流儀の違いどころか能楽が分業制であることや能自体が如何なるものかも知らなかったりすると、異流混同の共演(競演と書くべきか)やトークというのは興味が出なかったり若しくはワケのわからない世界な気がしてしまいそうだが、かえって異流儀同士が語ることから能という芸能の一つの真理まで行かずとも能の大切な部分は浮き上がって見えてくるかも知れません。
林宗一郎さんは私が修業中の頃から好きな能楽師の先輩でしたから、お声掛けを頂ける事とはつゆも思はず実に光栄なことです。
皆様には是非ともご来場賜りたく存じまする。

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まだまだ寒い日が続きます
なかなか寒い居間に降りることが
億劫な毎日でござります

昨日は金剛定期能にて
若宗家の西王母のツレを
勤めさせていただきました

本日はお装束の片付けと
その際に使用された天冠(てんがん)
という天女や高貴な女官等の役が
頭に戴く冠の修復です
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能の作り物や小道具大道具は
能楽師自ら(主に内弟子)が
作成にあたったり修復を手がけたり
いたします

蔵の中には100年を超えるような
お道具も多く存在します

物は丁寧に扱い
修繕しながら大切に使いますと
えらい長持ちするのだなあと
感心します
使い捨て当たり前の此の時代
見習わなければ行けませぬ

さらに寿命の来たお道具は、
捨てずに「参考品」として
同じ形で新しいものを作り
いつまでも取っておきます

目に見える形は新しくなりても
その道具にあしらわれた知恵や
寸法、心などは同じ

つまり新しいお道具でも
最近内弟子が作ったお道具でも
昔の人の残して来たものと
本質の部分は変わらないのです
見た目が新しいだけ

心掛け一つで
皆様の周りにある生活品も
大切なお道具に見えて来るはずです

 
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今後も先輩方や後輩が
使用される天冠ですから
不慣れながらも心を込めて
金を貼ります

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