不安の中、眠りについたのだが、起きてみるともうお昼をまわっている。ごそごそとカバンの中身を探ってみても、やはりビタ一文出てこない。

グアム島6泊7日、一人旅。只今3日目昼過ぎ、残り所持金35$(-55$)

僕の散々な旅は、まだ始まったばかりだ。今までの人世の中で8番目くらいの大ピンチ。



現状で抱えている大きな問題点は2つ。

ひとつ。残り6日の食糧問題。
ひとつ。既に使ってしまったルームサービス代金90$が財布に残っていないこと。

この2つさえクリアできれば、後のことは何とかなるだろう。



やはり、一番ヤバいと思われるのが、食糧問題。残り4日半を35$で乗り切れるほど、観光地の物価は安くはない。

ビーチから少し離れれば、多少は物価が安くなるような気もしたが、土地勘が無い上に、極度の方向音痴の自分としては、あまりそんな気にもなれなかった。

美人のお姉さんに声をかけられ、滞在中のご飯を全部奢ってもらう。これがベストだが、そんな楽しい事はまったく期待できそうにない。

ロビーで少し仲良くなった、日本人の女の子二人組がいたが、ご飯を食べに行ったところで奢らされるのがオチだ。

考えろ。考えるんだ俺。必ず突破口はあるんだ。何か必殺技があるはずだ。
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とりあえず外に出てみる。腹ペコでも目の前には水色の海が広がっている。僕の手元にあるのは、日本から持ってきた小さなボディボードだけ。レンタルでサーフボードを借りようと思っていたのに、それはもう叶わぬ夢だ。

プカプカと海に浮かびながら、お金の無い不安から、望郷の念に強く駆られる。そうこうしてるいうちに、太陽は水色の海に沈んでいき、また夜がやってきた。

3日目は海に浮かんで、ハンバーガーを2つとコーラを飲んだだけで終わった。出費5$、残り所持金30$。



そして4日目の朝、腹が減りすぎて早朝に目を覚ました。部屋にいても何も始まらない。水着に着替え、ビーチに出ることにした。

そして、ここで僕はとんでもないミスを犯してしまった。

パーカーのポケットに入れておいた10$札を紛失してしまったのだ。さすがに自分のバカさ加減に呆れて、その場に座り込んでしまった。

残る所持金はいよいよ20$となった。本当に本当に大ピンチだ。

男のくせに泣きそうになった。誰か助けてください。誰か優しく抱き締めて、励ましてください。
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涙目で砂浜を見渡すと、同じくらいの歳の若者4~5人のグループがいるのが見えた。

みんなサーフボードを抱えて楽しそうに話している。現地の若者らしく、日本人ではないようだ。

もうやけくそだ。

僕は英語も話せないくせに、ズカズカと彼らに歩みより、「ハーイ!」なんて声をかけてみた。

すると、その中の一人が「日本から来たの?」と流暢な日本語を話し始めたのだ!

これはチャンスだ。もう彼らと仲良くなるしか道は残されちゃいない!強い思い込みを発動させて、「日本から一人で来たんだけど、つまんないから一緒に泳ごうぜ。サーフィン教えてくれよ」と、フレンドリーな人格を演出して、一か八かの飯を奢ってもらう作戦を敢行することにした。



彼らはみんなとてもいい奴で、ボードを貸してくれたり、遊ぶ場所や飯のうまい店を教えてくれたりして、この日の午前中は、久々に不安を忘れて楽しく過ごすことができた。

時計は12時を回り、昼時がやってきていた。みんな海から上がって、飯でも食いにいこうか的な雰囲気になっている。

僕はドキドキしていた。彼らに談してみても大丈夫だろうか。確かにみんないい奴でノリも良い、しかしさっき会ったばかりの異国の民に、「お金が無いんだ、飯奢ってくれよ」などと、図々しい事を言われて気分を害さないだろうか?

せっかく友達になれたのに、なんだこいつと思われないだろうか?

迷った。とても迷った。

しかし、このまま餓死するわけにもいかない。そう、旅の恥はかき捨てなんて、良い言葉があるじゃないか。別に嫌われたって死ぬわけじゃない。

覚悟を決めて、すべての事情を話すことにした。



日本語を話すことのできる彼の事をみんなは「ビー」と呼んでいた。実際にビーかどうかは分からないが、少なくとも僕にはそう聞こえたので、この先は彼の事を「ビー」と呼ぶことにする。

ビーは、僕の話をニコニコしながら聞いていた。そして、話が全部終わると、他のみんなにそれを通訳して伝えてくれたみたいだ。

恐れていた事態はまったく起こらずに、むしろ、みんなのテンションは爆発的に上昇していた。

すると、ビーとは別の男子がヌッと前に出てきた。名前は分からない。ビーはおもむろに彼の事を指さすとこう言った。

「こいつに泳ぎで勝ったらハンバーガー10個だ!」



ほう。

ほほう。

そういうことね。

僕は心の中でニヤリと悪い笑顔を浮かべていた。サーフィンならやばかったね、非常にまずかった。だって彼らは毎日波に乗っていそうだったから。

しかし、泳ぎとなれば話は別だ。青春時代のほとんどすべてをプールで過ごしたんだ、そう簡単に負けるはずがない。

ただ、ひとつ問題なのは、競泳の4泳法の中で一番スピードが出るのはクロールだ。僕は平泳ぎの選手だったし、まずいことに4泳法の中では、如何んせんクロールがとても苦手だった。

だが、チャンスはやってきたのだ。弱音を吐いている場合じゃない。

頭の中では、もし負けたとしても、何だかんだ飯くらい食わせてくれるだろうなんて、甘い事も考えていたが、現実はどうか分からない。

勝ち取るしかないのだ!



ビーは、二人に説明をすると、再び海に入って50mくらい離れた場所で手を上げている。

ルールは至って簡単。ビーの所まで早くたどり着いた方の勝ちだ。

ハンバーガー10個の勝負だ。気持ちはもはや日本代表。僕には少しの油断も隙もまったく無かった。

そして、周りの友達がはやし立てる中、いよいよ勝負の時はやってきた。

「ヒューヒュー!ヒューヒュー!アーユーオーケー?」

「いつでも来いや!」

「レディィィィィィ!!!!!」

「ゴォッ!」

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僕は、すべての力を魂に込め、砂浜を走り、真っ青な海へと飛び込んでいった。

-つづく-



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