“いちばん丁寧な和食レシピサイト”として大人気のWebサイト『白ごはん.com』の運営や、わかりやすくてトライしやすい料理本の出版など、料理研究家として活躍されている、冨田ただすけさん。「家にある調味料で、手に入りやすい食材を使ったおいしい和食レシピを提案」されている冨田さんに料理研究家にどうやってなられたのか? 和食へのこだわりについてなど聞いてきました

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小学生のときからの料理好き

――LINE BLOGにもたくさんのレシピを載せてくださっていますが、お料理はいつから始められたんですか?

冨田ただすけ(以下、冨田)「小学校の低学年の頃から、キッチンに立つ母を見て『やってみたい』と自分から言ったらしいです。ちょっとした手伝いから始めて、包丁も使うようになりました。2つ上の兄がいるんですけど、一緒に週末に作ったり、家族の誕生日には子どもが料理を作る係になったりしていました」



――そこから料理に目覚めたんですか?

冨田「そうですね。その頃からやってたので、高校生になると男友だちを家に呼んで『俺が豚キムチ作るよ』って作って、一緒に食べたりとか。大学はさらにレベルアップして、鍋パーティーをしたりしました。ワンルームに20人くらい入って、私の実家が下関なので、ふぐを取り寄せて『食いたい奴は集まれ!』みたいなことをしたら、すごい人数が集まっちゃって」


 
――大学は何学部だったんですか?

冨田「大学は普通に文系なんで料理と関係なくて。でも、アルバイトはずっと飲食をやっていて、調理を担当してました。大学卒業で、就職するなら食関係の会社かなと思って、食品の会社に入りました。デパ地下にRF1とか神戸コロッケとか入っていると思うんですけど、あれを作っているロック・フィールドという神戸の会社がやってるおそうざいの会社に入ったんです」



――そこでは何を担当されたんですか?

冨田「自分で希望して工場勤務させてもらって。ドレッシングに使うだし取りをしたり、サラダに入れる野菜をカットしたり、そういう仕事をしました」



――そこで何年か勤めてから、調理師専門学校へ

冨田「そこは1年しかいなかったんです。知識欲が湧いてきちゃって、『料理のことをもっと知りたい!』と思って飛び出したんです。こんな中途半端なことじゃダメだ!って(笑) 。それから大阪の調理の専門学校で1年間勉強して、そのあと、日本料理店での修行を3年間して。そのあとは食品メーカーの研究開発の仕事を6年くらいやりました」



――日本料理店で働いていた期間はいかがでしたか?

冨田「地獄のような日々でした(笑) 朝から晩まで。お茶会をやるときが一番大変で。大きな美術館でお茶会などがあると例えば1000人くらいの規模になったりしていました。そういうときは朝の3時半からずっと夜の0時まで働き続けて、ようやく帰って。また次の日も。お茶会が何日か続くときはその繰り返しでした。ふだんの日も結局休みの日でも次の日の仕込みをやらないといけないので、お休みというものがなかったですね」



――その後、また食品会社に入り、研究職に

冨田「そうですね。自分で独立はしたかったんですけど、もう少し広い視点で食と向き合うような仕事もしたかったので。料理屋さんの技術や体験は何ものにも代えがたいものがあったんですけど、多くの人に愛されている食品メーカーのサラリーマンとして、もう一度勉強しようと思ったんです。企画をどうやって育てるかとか、商品をどう育てるか、マーケティングやブランディング、そういう仕事もやりたかったので。それプラス、味作りに関しても、今、世の中って外食や加工食品の味付けがどちらかといえば多く、パンチのある味付けがやっぱり支持されるので。料理屋の上品な味を知ったうえで、さらに加工食品の味作りのノウハウも知りたかったっていうのもありますね」



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大人気和食サイト「白ごはん.com」の立ち上げ

――そのときから和食の方向性に行きたかったんですか?

冨田「そうですね。和食はずっとやりたいな、と思ってました。でも、僕はずっと大学を卒業したらおそうざいの会社に入って、将来は自分でおそうざいのお店をやろうと思ってたんです」



――おそうざいのお店を?

冨田「おそうざいを売る会社をいつかやろうかなと漠然と考えてて。どちらかというえば僕は家庭的な和食が好きなので、それを中心にしたいなと思ってて。でも、だんだんやりたいことや求められることが変わって、結局料理研究家って仕事についたんですけど」



――「白ごはん.com」についてもおうかがいしたいのですが、寿がきや食品時代から立ち上げられていたんですよね? あれはどういうきっかけで立ち上げられたんですか?」

冨田「食品会社に入ってから、時間が有り余っちゃって(笑)」



――料理屋さん時代から比べると?

冨田「そうなんです。サラリーマンとして大変だったし、責任も重かったんですけど、20時とか21時には家に帰れるんですよね。なんかそれが感覚的にその頃の自分がずれてたんで、『こんな時間に帰って何をするんだ!?』って思って。料理屋で修行したときに、野菜や魚の下ごしらえのしかただとか、得た知識や技術を家庭料理で活かせることは多かったんですよ。でもそれってあまり知られてないなということがいっぱいあって。それをひとつひとつ伝える場所はないかなって思って。自分でサイトの作り方から勉強して、HPを作ってみたんです」


冨田さんのサイト「白ごはん.com」のレシピの一部をご紹介  今すぐ自宅にある食材と調味料で作ることができるものばかりです


「ぶり大根」
おいしく作るポイントは「きちんとぶりのあらの下ごしらえをすること」
 
ぶり大根

きちんと美味しく作る!ぶり大根の作り方/レシピ



「親子丼」
おいしく作るポイントは「1人前ずつ煮汁から作ること」

親子丼

絶品!親子丼の作り方/レシピ



「下味に醤油をきかせた鶏のから揚げ」
おいしく作るポイントは「つけ汁の醤油の割合を多めにすること」


唐揚げ

下味に醤油をきかせた、絶対おいしい鶏の唐揚げのレシピ/作り方



独立、料理研究家としての活動

――写真をいっぱい使って、わかりやすく作り方を紹介した「白ごはん.com」は大人気になりました。そこから独立されたんですか?

冨田「結局そうですね。サラリーマン時代から雑誌の取材をしていただいたりとか、レシピ本も出していたので」



――「白ご飯.com」は写真もすてきで、和食屋さんで食べるようなおしゃれ感があるんですけど、でも作るのが難しそうに見えないのが不思議でした

冨田「ありがとうございます。そういっていただけると嬉しいです」



――男性の方が提案されてるからかもしれませんが、彼氏や旦那さんに作ってあげたら喜んでくれそうなレシピですよね

冨田「最近料理教室もよくやるんですけど、やっぱりそこでもそう言っていただけることがすごい多いですね。『夫に作ってあげたらすごく喜ばれました』とか」



――レシピを考えるときってどんなふうに思いつくんですか?

冨田「まだ料理研究家になって3年目なんですけど、今月出るレシピ本でちょうど10冊になるんです。よくそんな出したなと自分で思うんですけど。1冊100レシピくらい載ってるので、1000レシピくらいは今までに考えたことになるんですよね。その中で自分が気をつけてることというのは、『あまり特別な物は使わない』ということです。もちろん和食なので例えば春ならタケノコとか旬な物は使うんですけど、家になさそうなちょっと変わった調味料、たとえば黒酢とかバルサミコなんかは使わないようにしています。本当にしょうゆと砂糖と塩とみりんなど、基本的な調味料とあとはお味噌。それで作れるというのはできるだけ心がけています」



――高い食材や珍しい調味料が入ってくると、それで作るのをあきらめちゃいますもんね

冨田「そうなんです」


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――お仕事されていて大変だったことや苦労したレシピはありましたか?

冨田「料理とは関係ないんですけど、これまでに出した何冊かの本には、自分でゴム版画を使って、それをイラストとして入れてるんですよ」


こちらが冨田さんのゴム版画! お上手です


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――なぜゴム版画にされたんですか?

冨田「1冊目の本のときに編集者さんから『何か冨田さんって字も絵も書けそうだよね。イラストも冨田さんが描いてくださいよ」って言われて。『でもイラストはさすがにプロではないので、ゴム版画だったらできます』と言ってしまったんです。小さいときから絵も好きで習ってて、絵を描いたりとかゴム版画をしたりとかをよくやってたので」



――多才ですね!

冨田「名古屋で料理研究家として独立するというのはすごく条件的に難しいことで。どうしても東京に出版社さんは集まってるので、これなら自分でもできますよっていうのがあった方が声をかけていただけるかな、というのもあって。それでゴム版画をやったり、写真を自分で撮ってみたりしたんです。スタイリストさんもなかなか名古屋には来てくれないので、盛り付けや器選び、キッチンクロス選びなんかも全部自分でやりましたね」



料理研究家になるには!?

――逆に今までお仕事をされてきて、楽しかったことはありますか?

冨田「締め切りに追い回されすぎてたので、それを実感する暇もなかったぐらいですね。今年はちょっとそれをペースダウンして、やりたかった料理教室とか自分で商品をプロデュースして出したりとか。そういうことを考えたいです」



――商品とは例えばどんなものですか?

冨田「まだ自分の中で企画を練ってるだけなんですけど、例えばだしパックとかを自分のブレンドのものを商品化したいなと。それでいろんなメーカーさんにサンプルを貰ったり、そういうことは進めています」

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――料理研究家になりたい方はたくさんいらっしゃると思うんですけど、なるためのアドバイスはありますか?

冨田「僕の場合は、もっと和食を広めたい!ってくらい和食が好きだったっていうのがあるんですけど。男の人で和食っていうと料理人の方が多くて、ちょっと年齢も高めの方が多いので、そこで差別化できそうだなと。結構自分のブランディングは客観的に見ていて。それが自分の好きなことと結びつくと、すごく料理研究家って道は近いのかなと思いますね」



――ブランディングが重要なんですね

冨田「そうですね。結構料理本ってどんどんとがった情報が出て、それが出版されてるので。例えばココナッツがはやったらココナッツをいっぱい入れて。ちょっと前ならキャラ弁とか塩麹(しおこうじ)みたいな。でもそれって、誰でもレシピ本を出すチャンスがあるということだと思うんですよ。自分の好きなことである程度世の中でニーズがあるであろうものに1個賭けてみて、それをしっかり深堀りしていくと料理研究家になる前にレシピ本を出す機会に恵まれると思いますね」


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――今後挑戦してみたい新たなジャンルはありますか?

冨田「今は『白ごはん.com』をWebで静止画で見てもらっているので、やっぱりこれからは動画だろうと思っています。ちょっとずつでも動画でコンテンツとして見れるようにしていきたいです」



――最後に料理を「忙しくてできない!」という人も多いと思うのですが、毎日料理を続けられるコツはありますか?

冨田「和食に関して言えばだしを取るってすごく大変なんですけど、だしがあれば案外早く料理ができるというのは間違いないんです。パッとみそ汁も作れるし、風味がすごく豊かなので、なにか1品おみそ汁があるだけで満足感も違うんですよ。だしパックをうまく使ったりして、負担のない調理法から始めてみてはいかがでしょうか」


――ありがとうございました!


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冨田さんの最新レシピ本が発売されました!

 
  


冨田ただすけ 公式ブログ


終始にこにこ、優しくお話してくださった冨田さん。家庭での料理は奥さまとおふたりで作られるんだそうです。「料理に関してあまりアドバイスしすぎると怒られるので、気を付けているんです」と苦笑いしながら教えてくれました 


会いたい“あのひと” を身近に ―― LINE BLOG。
お料理上手は、愛情上手って、本当ですね!
それでは、また。


(撮影/奥田耕平、取材・文/Mikity)