映画『君の名は。』や『怒り』など数多くのヒット作を手掛ける映画プロデューサー・小説家で、今回クリエイティブ・ディレクターを務める川村元気氏と、星野源やサカナクションなどのMVで知られる映像作家の関和亮監督が、LINE LIVEとタッグを組んでスマートフォン対応のタテ型MVを制作する「Portrait Film Project」。ぼくのりりっくのぼうよみの「在り処」、DAOKOの「拝啓グッバイさようなら」に続くプロジェクトの集大成となる第3弾は、5月にベスト盤『blanc』『noir』をリリースするAimerさんの「六等星の夜」だ。

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2011年に発表したデビュー以来、これまでライブで何度も歌われてきた大切な楽曲のひとつである「六等星の夜」。今回のMVはアイスランドの幻想的な大地を舞台にして、Aimerさんの唯一無二の歌声が、その息遣いまで聞こえそうな臨場感を持って作品に閉じ込められている。撮影を終えたばかりのAimerさんに、「六等星の夜」とアイスランドについての思いや、撮影当日のエピソードについて語ってもらった。

―今回は「Portrait Film Project」でアイスランドに向かい、「六等星の夜」のMVを撮影していただきました。まずは今回のオファーが来たときの感想を教えてもらえますか?

川村元気さんも関和亮監督も今までご一緒したことがなかったので、一緒にMVを作れることが幸せだなと思いました。LINE LIVEさんに感謝しています。

―しかも今回は、スマートフォンに特化したタテ型のMVを撮るというユニークなプロジェクトでした。
 
今回の撮影が決まって「Portrait Film Project」のぼくのりりっくのぼうよみさんとDAOKOさんのMVを観たんですが、スマートフォンのカメラで写真を撮るときのように「その画面越しに本当にアーティストの方がいるんじゃないか」という錯覚に陥りました。

―Aimerさんは以前、インターネットライブでもアイスランドから配信していましたね。
 
はい、アイスランドでの撮影は今回が2回目です。もう一度行けることに運命を感じました。アイスランドは、「氷」と「火山」の国で、すごく冷たいのにマグマがあるという、両極のものが存在しているところが好きなんですよ。今回のMVにも、アイスランドで撮ったからこその風景がたくさん映っていると思います。
 
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―Aimerさんの音楽にも、一見相反する要素が同居しているような魅力があると思うので、かなり似ている部分があるのかもしれませんね。
 
元々アイスランドの音楽が好きで聴いていて、以前から行ってみたいなと思ってたんですが、行くきっかけを作ってくれたのは、デビュー以来ご一緒しているスチールカメラマンの方。彼が実際に現地に行ったことがあったみたいで、私の音楽に合うんじゃないかと提案をしてくれて。今回も、関さんが「私に合うところ」として候補に挙げてくれたみたいです。しかも、関さんは私がアイスランドに行ったことがあるのを知らなかったそうなんです(笑)。

―それはすごい巡り合わせですね。撮影当日、久しぶりに向かったアイスランドはどうでしたか?
 
「空気が澄んでいるな」と感じました。空気が澄んでいると色も綺麗に見えるんですよ。だから景色がとても鮮やかで。車を走らせて郊外に出るとまるでおとぎ話の世界のような大自然があって、2度目でも感動しました。
  
―撮影はその大自然の中で行なわれたそうですね。大自然の中に、アップライト(ピアノ)がポンと置かれている画が印象的です。
 
周りの風景にすごく合っていましたよね。川村さんがアイディアを考えてくださったんです! 私もその案を聞いたとき、いい意味でインパクトを感じたので、「すごくいいですね!」と言ったのを覚えています。

―当日も川村さんや関さんと話し合いながら撮影を進めていったんですか?

そうですね。和やかな雰囲気の中、何度もテイクを撮りました。夢中になっていて全然多くは感じなかったんですけど、気づいたら11テイクもやっていたみたい。撮った映像を観ながら、「次はもうちょっとこうしてみようか」とアイディアを出して進めていきました。寒いなか歌うので、心配な面もありましたが、気持ちよく歌えました。今回は衣装が顔を覆うようなものだったので、それが喉を守ってくれたのかもしれないですね。
 
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―アカペラにも挑戦しているんですね!

実はマイクを通さないときの声がいちばん好きなので嬉しかったですね。ぼくりりさんやDAOKOさんのMVはセンセーショナルでリアルな雰囲気の作品になっていたと思いますが、私の場合は最初に言っていただいたように「声」を大切にして活動してきたので、今回はその声をリアルに浮き彫りにしてもらえたと思います。

ー現地の人気アーティストのサポートを務めている方も参加していますね。(※オブ・モンスターズ・アンド・メン) 
 
とても優しい方でした。MVでは途中までは私がひとりで歌っていて、彼のところにたどり着いて、合流して歌うんですよ。最初は私がボコボコとしたところを歩いていて、ポツンと自然の中に置かれたピアノにたどり着いて、一緒に歌うという感じで。

―面白そうですね。中でも印象に残っているシーンはありますか?

岩場だったので、足場がボコボコしていて……歩きながら歌っているとスカートが引っかかっちゃうんですよ。何度引っかかっても直して歌い続けたので、そのシーンは、すごく印象に残っています。あと、MVには入っていないと思うんですが撮影の最後に見た夕日がすごく綺麗で。あまりにも神々しくて、「神様がいるんじゃないか?」と信じたくなってしまうような光景でした。

―そんな風景の中で歌った「六等星の夜」は、Aimerさんの記念すべきデビュー曲でした。この曲は今のAimerさんにとって、どんな曲ですか?

いちばん思い出深い曲ですね。デビュー当時は、私のことをまだ誰も知らなかったので、この曲を通して「誰かに知ってもらえた」という感動がとても大きかったですし、「自分の原点だな」と思います。それに、これまでたくさんライブでも歌ってきた曲なので、いろんな思い出も詰まっていて。もともと、みなさんの心に届くような歌を歌っていこうという心持ちでAimerというプロジェクトを立ち上げたんですけど、当時はまだ、どういう風にそれを届けていくかは未知数でした。でも、今振り返ってみても、この曲で(アーティストとしてのキャリアを)はじめられたことは、すごくよかったです。

―キャリアをまとめたベスト・アルバム『blanc』『noir』がリリースされるこのタイミングでデビュー曲を歌うという意味でも、印象深かったんじゃないかと思います。

そうですね。しかもアイスランドで「六等星の夜」を歌えるというのは、本当に運命を感じました。歌っているときは本当に夢中だったんですけど、私は普段ライブではすごくセンシティブになるし、ちょっとでも乱れるとすごく気になってしまうんですよ。今回は歩きながら、アカペラで歌う必要があって、それがどうなるんだろうと不安だったんですけど、実際は何の心配もいらないくらい、声が伸びたのを感じました。自分自身気持ちよく歌えたというか。それは「六等星の夜」という、私がずっと歌い続けてきた曲だからこそだと思うし、アイスランドという空気が綺麗で美しい場所で歌えたからだと思うと、このタイミングでデビュー曲をまた違う歌い方で歌えたことはすごく嬉しかったですね。

―何度も歌ってきた「六等星の夜」でありながら、Aimerさんにとっては新しい扉を開くような体験になったのですね。

「こんなに解き放って歌えるんだ」と思いました。初めての体験でしたね。

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―デビュー当時と今とで、歌への向き合い方に変化はありましたか? 

変わってきているのは、いろんな振り幅のある曲を歌うにつれて「歌い方もどんどん変えていく必要があることに気づいた」ということですね。私はもともと喉が強いわけではないので、何曲も歌うことには慎重にならなければいけない部分もあります(Aimerさんは15歳の頃に声が出なくなり、沈黙治療をしたことをきっかけに現在の歌唱法を確立。完治すると今の歌い方は出来なくなると言われている)。それに、最近は大きなライブをさせてもらえるようになってきているので、もっともっと歌い方をシビアにしていますね。

―逆に、変わってないものはどんなところでしょうか?

でも一方で、気持ちの面で歌に対する向き合い方や、声の捉え方は、それこそデビューよりも前の、歌い始めたときから何も変わっていないんです。自分に限らず人の声も含めて興味があったり、「自分の声をコントロールしたい」と思ったりする気持ちは、昔からずっと変わっていないですね。
 
―今回MVを観てくれる方に、どんなところを楽しんでもらいたいですか?

CDとしてパッケージされた「六等星の夜」もすでにありますが、今回のMVでは、ここでしか聴くことのできない「六等星の夜」をまた新しく作ることができました。それを、ベスト・アルバムがリリースされるタイミングで聴いてもらえるのもとても嬉しいことです。だから、今まで私の曲を聴いたことがなかった方も、これまで「六等星の夜」に親しんでくれていた方も、臨場感がある、リアルな「六等星の夜」を楽しんでもらえると嬉しいですね。

(文:杉山 仁) 

【番組概要】
Aimer[Portrait Film]
配信日時:2017年4月21日(金) 19:00~
アーカイブはコチラ: https://lin.ee/3c2QGf2/sbbj/170421
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