5月11日は私が起こしたチャンネル桜への民事訴訟の第1回期日で、東京地方裁判所第712法廷で口頭弁論が行われました。それについて簡単にご報告します。
提訴に至った経緯については、私の先のエントリをご覧ください。

原告側は私と私の代理人である小倉秀夫弁護士、被告側については被告らは欠席し(第1回は被告の欠席が認められています)、代理人の弁護士1名のみの出席でした。
第1回期日までに被告代理人から答弁書が届いていましたが、その主張を以下に簡単にまとめてみたいと思います。

その前に若干、補足しておきたいことがあります。
「香山リカ」は私の筆名なので、訴訟は当然のことながら本名で起こしています。
また、今回の訴えの理由となった「チャンネル桜」の「沖縄の声」というネット番組の中で、被告らは「この人が勤める診療所に保健所から監査が入った」「医師法に違反している」などと述べていますが、これまた当然のことながら、私は診療所には筆名の「香山リカ」としてではなくて、本名で勤務しています。
 
「香山リカ」が精神科医としてどこの病院に勤務しているかについては、積極的には明かしていません。それには理由があります。これまで著作などで何度も繰り返してきたことですが、ここで再度、簡単に説明します。
筆名での著作を読んで受診を希望される方は、たいていの場合、「この香山リカという医者なら私の問題を解決してくれるのでは」と大きな期待を抱いています。ところが、私がいまの勤務先で行っているのは、健康保険内でのごく標準的な医療、つまり「どこでもやってるふつうの医療」なのです。常識的に考えて、患者さんの大きな期待に応えるものではないと思われます(もちろん、たまたまこの病院を選んでやって来た目の前の患者さんに対しては、できる範囲でいつも全力を尽くして診療しているのは言うまでもありませんが)。

ただ、これまでもいろいろな方法で「香山リカ」の勤務先を調べ、「わらにもすがる思いでやって来ました」といらっしゃる患者さんもいました。その方には一通りのお話をお聞きし、「毎回の診療のワクは10分ですし、できることはこれだけなのです」とこちらの限界を示した上で、「個人的にはお近くで通いやすいメンタルクリニックにいらした方がいいですよ」とおすすめしたり、「そういった悩みならソーシャルスキルトレーニングの適応になりそうですね。それを得意としているドクターは…」と紹介したりするようにしてきました。
ただ、ときには「ここが“ふつうのクリニック”ということはわかりましたが、せっかく来たので通いたいと思います」とおっしゃる方もおり、そのときは後の治療を継続することもあります。

そう説明しても近年、「香山リカの本名はこうで、勤めている病院はここだ」とネットの匿名掲示板などに書きたてる人がいます。前後の書き込みなどを見ると、その目的は「受診したい患者さんのために」ではなく「隠している個人情報を暴いてやりたいため」という悪意に基づくもののようです。ツイッターなどでそれを見つけると、上記のような説明をして拡散を控えるようにお願いしてきましたが、そうすればするほど本名を連呼したり病院への電話攻撃をほのめかしたりするので、最近はほとんどあきらめていました。

さて、それを理解していただいた上で続けましょう。被告側の主張の骨子は以下の通りです。
・ 香山リカ=原告であることの証拠が提出されていないこと
・ 香山リカ=原告であるとの認識が、この社会において一般人の共通の認識になっているとの主張がないこと
・ 本件によって原告が職を失ったとか収入を失ったとかの物的被害の主張がなく、何故精神的被害を被ったかの主張もなく、損害は発生しなかったということ

これらについてのこちらからの反論は、第2回口頭弁論期日(6月15日午前10時半より、東京地方裁判所第712法廷)前に準備書面という形で提出したいと思います。 

ところで今回の第1回期日では、こちらの代理人と被告の代理人との間で2、3の口頭でのやり取りがありました。それを記せば、上記の答弁書の骨子がさらにわかりやすくなるかと思います。
原告代理人「そちらの主張としては、原告と香山リカが同一人物だと知らないということですか」
被告代理人「わかりませんね」
原告代理人「では、病院に監査が入ったとありますが、その入られた病院の医師はいないのでしょうか」
被告代理人「いるんでしょうね」
原告代理人「では、それは誰のことですか」
被告代理人「わかんないですね。いや、この○○○(原告)って人じゃないですか」
原告代理人「それをわからずに言ってたのか、被告の栗秋琢磨氏に確認お願いします」

なお、チャンネル桜は同局の番組の中で、繰り返し「この件について同局の番組での公開討論」を呼びかけ、私にその依頼書を送って来ています。私は別のエントリでチャンネル桜からの質問状に「なぜこのようなデマが拡散されたのか、貴局で検証を行い番組で結果を公開されてはいかがか」とお答えしましたが、それは「私も出演しての公開討論」ではありません。

現在、裁判にかかっている事案を含む問題について裁判とは別に公開討論に応ずることは裁判所に対しても失礼としか言いようがないと思います。また、私は今回の問題について弁護士を代理人につけているのに、直接やり取りを迫るというのも非常識な話かと思われます。よって、「番組に出演してそこで討論をせよ」という依頼に応ずる気はない、ということを改めてお示ししたいと思います。

また、今回の提訴に関して、本当に多くの方々から力強い励ましやねぎらいのメッセージをいただきました。知人、友人、かつて仕事をした人からのものもあれば、会ったことのない読者やラジオの聴取者などの方からもあたたかいお言葉をたくさん頂戴したのは、まったく予想もしていなかったことでした。自分自身のことでこんなにうれしい気持ちになったのは、正直言ってはじめてかもしれません。この場を借りて、心からお礼を述べさせていただきます。

裁判の経過については、今後もみなさまにお知らせしたく思います。これからもよろしくお願いします。