そろそろ満5歳になる

 1945年3月10日

 東京都下小金井町

 現小金井市にあった

  国鉄官舎の自宅で

 夜 空襲警報のサイレンを聴いた

 家族みんなで防空壕のある

 庭へ出た

 でも

 この頃はもう防空壕に入らなかった

 陰気なんだよ

 変な匂いもしてね

 夜は特に入りたくない

 防空壕に入らず

 夜間の空中戦を見上げていたもの

 実弾数発に1発の割で

 曳光弾が撃ち出される

 だから

 夜空に赤い点線が描かれる

 ヤバいんだよ

 きれいだ

 なんて思ったもの

 戦争で起こる現象には

 美意識を刺激するものがある

 だから

 戦争は悪魔の行為なんだよ

 
 このときも庭に出て

 空襲警報の解除を待っていた

 東の空が

 みるみるうちに真っ赤に焦げていった

 凄いんだよ

 こっちの頬が火照る感じだった

 不気味だったよ

 赤い色が濃淡定まらず変化した

 怖かったよ

 赤い空が迫ってくるようだった

 でも

 子供心にきれいだと思った

「きりがないから家の中へ入ろうや」

 父が我に返ったように言った

 
 あの真っ赤に焦げた空の下で

 約10万人が犠牲になった

 明日で72年を迎える

 20キロ余り離れた郊外から見た

 東京大空襲の真っ赤な空が

 原風景だなんて

 嫌だ嫌だ嫌だ

 でも

 機会あれば子供達に

 この原風景のおぞましさを伝えてる